礼賛、したたか生き物(1)

小さな猛獣 ツシマテン

 


新シリーズの前に、ちょっと近況。

 

家の中にずっと居て

廃物なのか、必要なものなのか分からぬくらい混沌。

軽いウツだが、独りでイクサするのは結構面倒である。

片付けるというより見切りをつけて捨てるものが大半だ。

 

ウツを振り払って寝床からはい出し、

朝飯を食べると、やっと少し元気が出る。

本当は毎日一本アリナミンVを飲もうと思っていたが

それずらも忘れている。(書きながら思い出した)

 

ついに、ギガビットネットワーク機器関係を売却し

3NASび、こと3台あったNAS(小型ファイルサーバ)のデータを

普段使いやすくするために、メインマシンのHDDに移植する。

これからはNASは使わず、ハードディスクを裸で差し替え使う

裸族のお立ち台クーリングファンというのを使うことにした。

USB接続で、シンプルにいこうと思う。

 

アレコレためてあった物は、廃棄か売却することで

失う物も多いが、前よりも気分的にも身軽になったようだ。

 

それと

嬉しい本が、奄美野鳥の会から届いた。

奄美野鳥の会、記念事業で作成された野鳥図鑑である。

我が写真が初めて図鑑に掲載された、人生記念の一冊。

写真を提供させてもらったところ、一冊いただいた。

図鑑に写真が載るなど、夢のような話だが、

元気のない今のココロでは、感動も半分以下しか感じない。

ものすごく嬉しい出来事なのに、モッタイナイ・・・

 

もう少しだ、もう半月で徳之島。 頑張らんか!オレ!!


さて本題

対馬でヒラスズキを釣ろうと、釣り場を偵察していた11月。

対馬海流で温かいと勘違いし、とても寒くて困ったものだ。

大陸から吹き付ける、玄界灘手前の風が、どれほど寒いか

身をもって知ることとなった2002年晩秋であった。

(コタツに入っても、まだ寒っ!)

それと牛さんにもツムジあるんだ・・・とも知った。

とりあえず

偵察なんで宿を島のまんなかにしたのが問題。

ポイントも偵察も全部遠い、牛やウサギ、イノシシも

道々いたけれど。

 

モーいやってことで

コレにこりて、2003年は10月に島を訪れた。 牛は単に前フリ?

今度は南端、豆酘(つつ)へ宿を移し、南部の磯を見て歩いた。

しかし、いきなり南端とは極端な性格だなぁ。

 

南端の豆酘からは西海岸を北上する道がある。

このルートは島を一周できず、途中で終わっているから

南端を拠点に東西の海岸を偵察すると効率がいいのだ。

それと、南端には有名な岬の磯釣り場があって

宿から目と鼻の先で便利。

 

一級磯で釣るばかりでは面白くない

ポイントが分かってしまったら、釣りは半分終わり。

だから別のポイントを探したくなるのである。

 

板状の岩が転がる変わった磯だ。

この岩は、昔は民家の飛ばされない屋根になったそうだ。

こういう磯はサラシ(波による泡のベール)ができやすく

なかなか良さそうな磯だ・・・と思ったところ、気配が!

ネコかな。

 

と、思ったら小顔じゃん、でも足太いじゃん!

おぉテンか?本土にもいるな、でもなんかオレンジっぽい。

案外逃げずにアクビなんかするほど余裕の好奇心。

イタチとは警戒心というか、余裕がだいぶ違う印象。

シャッター音に、またコチラをジーッと見るテンらしき。

よくよく見ると爪が太い。 お腹も妙に大きい。

調べてみると・・・ツシマテン!? て、そんなの居たんだ!

魚探してて、動物見つけたよ。

普通、テンは山だし、夜行性だろうに。

対馬ではツシマヤマネコしか対馬の固有種は知らなんだ。

鳥、トカゲ、昆虫に木の実まで食べる人間以上のバイタリティ。

 

出産は初夏だとある。 お腹はご懐妊ではないのか?

これだと年明け早々には生まれそうな気が・・・

飽食メタボ?テンが、わざわざ餌を探して海岸へ??

しかも昼間に現れるとは信じがたい。

よほど腹が減っていると思う方が自然だ。

 

冷静に考えれば

全島をイノシシに侵略されて飢きんになり、人為的に

絶滅させた史実を考えると、再びイノシシがはびこる現代、

森の植物性の餌が年中不足気味になりやすく

ネズミなども減ると、植物性も動物性食物も得られず

勢い、海岸に出たくなるのも分かる気がする。

  

天然記念物なんだな、けど物なのか?それでいいのか?

指定されていないよりはマシだろうが、物あつかいは

どこか寂しいものがある。

ご懐妊なのか、それとも雑食のための腸の長さゆえか

微妙なお腹の見え方を疑問に残す写真だった。

 

ほぼ時を同じくして

近くの磯の偵察で、海岸の堤防に続く土手で見つけた

異様な植物の種っぽいのがコレ。

Oちゃんに調べてもらったところ、ムサシアブミという

テンナンショウの仲間らしい。

どうして虫屋のOちゃんが植物を調べられるのか

謎は深まりそうだが、彼のネットワークは半端ではない。

八丈島でも異様を見せていたウラシマソウに近い種という。

ウラシマソウは奇怪な花からツルを伸ばしており

そのツルが釣り糸に見えることから、ウラシマソウ

ホテイソウでも良いが、貧乏臭いところがウラシマらしさ?

しかしどう見ても釣り糸という連想は不可能に近い。

というか、連想するほうが変だ。

(手前に伸びたツルが釣り糸というが・・・)

テンナンショウの類(たぐい)は、花が独特で

ウツボカズラ風の食虫植物っぽい姿が特色。

異様のあまり、冷静さを失って名づけられてしまった

悲しい花?であった。 のか?

実は葉も独特で、10枚に分かれたモミジのような葉が

双葉みたいに対になって、大地からブッキラボーに立つ。 

徳之島にも近縁の希少種が存在するとOちゃんは語る。

それはまたいずれ調査して特集したい。

っていうか、Oちゃんの動植物ネットワークを知りたいよ!

それ以上にテンナンショウは天南星と書くセンスが知りたい!! 

どんだけ美化したら気が済むんだ!!!

どんだけ美化マニア???

豆しば!ぱいーんと教えれやれよ、お茶の間の方々に!

 

気を取り直し、閑話休題。

ツシマテンはあれから目撃してないので何とも言えぬ。

案外浅いのと湾奥が多いので釣りも思うにまかせず

二回ほど行ったが、のちに行くことはかなっていない。

テンが海岸線まで出てきた事実は、よほどの食糧難が

2004年秋にあったと考えて良いだろう。

 

あとでじっくり写真を観察し、生態記録を調べてみると

事実、真実を知る手がかりを得られる事がある。

釣り人の記録ですら、誰かの記録と積み重なれば

新たな事実をあぶりだせる。

事実の記録が大切、と思い始める出来事であった。

 

時は前後するが

2004年夏は、アマミノクロウサギがタマタマ撮影できた

幸運に恵まれ記録とともに写真観察の始まりの年であった。

 

ノッケから論述も何も・・・まったくタダの回想録なのだが

まーそんなこんなで、動物写真にハマッてしまうことに。


次回予告

観察の面白さ、鳥の魅力を教えてくれた

案外深い生き物、ウグイス。


ではまた