ポレポレなんくるタックル10


初心者ライフジャケットの心

それは長男のコダワリ。

(バイクに乗るときも)

 

磯でも、ライフジャケットを着けている姿には、あまり出会わない。

長男は、いつも派手で初心者風味の漂うライフジャケットを着ける。

磯で死線を漂うには、ライフジャケットは必須なのだが

同時に目立つ、バカっぽい色のものを選ぶのは訳がある。

 

空自(航空自衛隊)のジャンパーはリバーシブルである。

表は大空の濃紺、裏地はレスキューの黄橙食(黄色の強いオレンジ色)だ。

 

このカラーを基本にして選んでいる。

 

長男は昔、少年自衛官を志願していたりして

F15のパイロットか、整備士をめざしていたなごりだが

裏の黄橙色が大切なのである。

海に投げ出されたとき、黄色い裏地にリバースして

海原を漂うのである。

海原でライフジャケットを裏返せるかって?

死ぬのと同じくらい難しくても、死ぬよりマシだ。

(高い堤防でも)

 

太平洋を相手にする時、万に一つの事態を

いつも心においておくことが、誇りになると信じている。

 

格好悪いとか、他人がどう思おうと

簡単に死んだら、単なるバカな笑いもの人生に終わるのである。

 

釣りに美学だの、道だのを求めようとも

生きることを忘れてしまったら、そりゃただの笑いモノ。

ただの酒の肴の話題くらいなモノであり・・・

本人は本望だ!などと、誇らしく死んだと勘違いして死んでも

そういう軽々しいバカモンと結論される悔しい結末しか待っていない。

 

釣りで死んでもケッシテ美しくはない。

ま、サーファーなんかも同類だ。

波に挑むのは波乗りだけでないことを知る御仁がいるかどうか。

 

長男は、釣りを死に場所のひとつだろうと想像している。

馬鹿げたほどに荒い磯に出かけ、我を忘れ、家族を忘れて

釣りに狂じてしまう。

情けない死に場所と覚悟だが、仕方なかろうと思っている。

(内地の磯でも)

 

だが、ライフジャケットを着けぬ不届きな向きには

暑いから?格好悪いから?

なら、絶体に助けを求めるなよ!分かってんだろうな!

覚悟を決めた者だけが許される姿が、まるごしなのだ。

 

ライジャケをつけないヤツは、基本的に助ける義理はない。

明らかに、死ぬ事を是としている。

暑くて嫌なら、釣りをやめればいいだけだ。

 

つまらぬ理由から、笑いモノの死を選んだ人種だから

どうせ救ってもまた、同じくだらぬ死に様に至るわけで、

生かしておいても、全くのムダ、無駄、むだのカタマリである。

 

暑いってのは、少なくとも

じっとしているだけで、涙のように目の下から

ポタポタぽたぽたと汗が落ち、手の甲からも汗がしずくとなり

全身から汗がしたたるのが「蒸し暑い」

とシンプルに思う。

 

それでも、長男は釣りしてきたし、熱中症などは知らない。

多少汗が出て、パンツまでびしょぬれになったところで

釣りにも生命にも影響ないのだ。

 

まあ、蒸し暑く、風のない穏やか過ぎる夏の朝は

うねりでもない限り、辛さのわりに釣れないのだが・・・

(死にそうなときも

 

おっとオッサン的教訓はさておき

最近のヘナチョコライフジャケットには呆れるばかりだ。

 

まずポケットが情けない。

ファスナーがついているからといって

上からドッパンと水をかぶったら、簡単に水が入る。

そんなの、雨が降っただけで使えないようなヤワなもの。

 

磯で危険なのは、不安心である。

 

靴が濡れて足が冷たい、パンツがびしょ濡れになる

服が、道具が海水に濡れるといった、つまらない理由で

人間は簡単にバランスを崩すものである。

 

少なくとも、道具が濡れるから、水を避けようとするような

ヤワなライジャケでは本質的に失格だ。

 

釣りをする人の気持ちを知って作っているライフジャケットは

今はもう無いように思う。

 

特に赤い色を使ったライフジャケットは危険だ。

小さくて安っぽい磯釣りを、アグレッシブ風に演出する

カタチだけ作り上げる、パチモンだからだ。

 

どうでもいい作りなのに、妙に高価で、

なんか意味もなく、全然センスのない社名が

平然とドデカく入っていたりする。

 

海で赤い釣り人の姿を見たら、まず怪しんだ方が良い。

金だけ払って道具から入るか

何も知らずに磯気分に浸っている連中がほとんどだからだ。

 

無論、そういう赤い連中の中に、真の磯バカも居て

たかが○ジナとかイシ○イとか追って、意味不明な南国まで

遠征してしまう、心底イカレたヤツは例外だ。

 

彼らのバカズは並外れていて、すっげーとんでもない磯師である。

長男以上に、バカもアホウも磨けば光ると信じる

バカの数を数え切れないほど踏んでしまっている

磯キチガイが居たりするので、あなどれない。

大体、南国の磯で、内地みたいな赤い姿のフル装備、

そんなんで暑い磯に立つこと自体、何かがふっつりと外れている。

 

ま、それは置いといて

黒潮をかぶるくらい、なんともなく

大海原にただよった時、極めつけに目立つ

最低限の安心を用意してくれるライフジャケットが

なぜか見当たらないご時世と思うが、違うだろうか?

 

本気なヤツがリストラされて、パチモンばかり世にはばかる。

パチモンはパチモンで改造して使うのも楽しいが

イチイチ改造するのも面倒である。

 

命を預かってもらうライフジャケットくらい

まともなモノを作ってもらえまいか、世の中よ。

 

ちなみに

初心者風ないでたちを選ぶのは、本当にそんな感じだからだ。

どこへ何度行っても、こなれた事をせず

常に何か初めてな事をやってしまっている。

だから、変に本気とか、クロート風味とか、変な誤解をされぬよう

初心者風味を大切にしている。

(キス釣りの時も)

 

恥ずかしい事を、恥ずかしいなりに追究する初心者魂

それこそが、安全第一、冒険第一、食味第一、荒磯第一な

長男の釣りを支える原動力である。

その原動力を具現化した姿

それが初心者風味ライフジャケットだ。

 

人間は、絶対に格好つけてはいけない、

生身以上のチカラは絶対に出ないのだから

ちっぽけで浮ついた気持ちで太平洋へ向かってはいけない

自分への戒めのカタチ、ライフジャケットは

こころのお守りも兼ねている。

(人生に溺れそうな時も)

 

あえて見た目はチープだからこそ、大切な大切な

最も大切な装備であることに、今もかわりはない。


※注意※

ジーンズで磯へ、舟遊びへ出かける向きには断言しておく。

 

落ちたら死ぬ。

 

ジーンズの厚い繊維は丈夫なかわりに

水分を吸うと膨張し、お互いが締め付けあって堅く硬く

ひどく硬いカサブタのような物質に変わってしまう。

足をまげて泳ごうにも、硬くて長くは動けない。

時間がたち、水を吸う毎に繊維は密度を増して板のようになる。

ジーンズの丈夫さは、水没した人間が扱えるほど半端ではない。

洗濯して干すとき、やたらにコワコワと硬いのを覚えているはずだ。

 

なんならジーンズで風呂にでも入ってみるといい。

硬くなる繊維のなかで、一時間、いや、海上で数日

付き合っていられるかどうか・・・

ふやけた肌が擦り切れて血がにじみ、サメを呼ぶだろう。

 

ジーンズは地上では丈夫で優れた素材だ。

だが、海を知らぬ人が生み出したモノでもある。

海を知る民族は、きっちりわきまえておく必要がある。

 

ちなみに、ノビノビジーンズも同様。

水に入れるとたちまち硬くなるので要注意。

 

(酒に溺れそうな時でも)


 

追伸

 

先日、長い長いたそがれの影を見た。

10月だというのに、暑くて夏気分満々だが

秋は夜長、夕暮れもずいぶん早くなった。

都会にいると、建物の影にかくれて

自分の影も見たことがなかった。

なんで長い影があたたかいんだろう。

なぜ、懐かしいんだろう。

ただの影なのに、影一つのことなのに。

なにもかも黄昏色につつまれるなか

自分の影が長く伸びていた。

 

なーんかやっぱり、寄り道しすぎたかな。

そんな思いがよぎっていた。


ではまた