最終日には、何かが起こる

 


最終日の夜、Oちゃんは妙に張り切っていた。

前の晩の約束だった役場のYさんの予定がシフトしたのに

前回大当たりであった獣医のK村さんまで連絡していた。

 

Oちゃんは、良くも悪くも後先考えぬ男だ。

社長だろうが町長だろうがアポ無し突撃する。

今回はアポありだが、ありすぎだった。

 

だいたい少し考えれば分かるだろう。

夜間の行動は、静かにせねばならないので車は一台きり。

人が増えれば、当然車もパワーが必要で、やかましくなるし

僕も、OちゃんもK村さんも全員軽四乗りではないか。

山坂道を簡単に走れるはずがないうえ

今回は更に未舗装林道へも立ち入る予定なのである。

このあたりの想像力は、多分Oちゃんには全く無い・・・

 

行く日の夕方、弾んだ声で電話してきたのがこの事態だった。

地元の人が2人も加わるのが嬉しかったようだが

こりゃ合コンじゃないぞ。気をつけんといけんぞOちゃん。

 

その夜は特に遅めに出かけて、天城町のユイの館でYさんと

合流して出発した。

 

Yさんはバンドをやっており、島のライブハウスや都内でも

演奏するほどの才人であるが、その夜はヤケに陽気であった。

こんなんで大丈夫か・・・・?

と、思われたが、地元育ちで社会教育課、島の自然にも詳しい。

実はOちゃんよりもポイントをわきまえているのであった。

むろん車のパワー、快適さを考えて車はYさんの乗用車に搭乗。

 

参考までに、OちゃんとK村さんは後席からのりだし気味に

前方を凝視している。

 

深夜、ここに4人のおっさん?が乗り合わせ、ひしめきあって

林道を走行している姿ときたら、かなり可笑しい。

幸い、対向車、目撃者は現れず

この事態は人の目には触れなかったようである。

 

台風のために、一昼夜の間、時折豪雨に見舞われた林道は

生き物の気配が濃厚である。

一部林道が土砂崩れで閉鎖されているのが痛いが

それでもさすがは地元、ポイントポイントではクロウサギが出現する。

ん?ついつい大きさに見とれて、クロウサギに一同集中するが

実は今夜、長男はトクノシマトゲネズミ、Yさんはオビトカゲモドキを

観察するためにやってきたことを、つい忘れがちになる。

それくらい、クロウサギはカワイイし現れたときの喜びはヒトシオだ。

 

Oちゃんによれば、未舗装の林道へ入ると、オビトカゲモドキの

出が良いという。

お出迎えは、ハナサキガエル。トノサマガエルより大きいわりに

ケロッとした、アマガエル風の容貌をもつカエルだ。

あまり目が光らず、写真写りの良いカエルでもある。

 

どの道にもカマドウマだけはたくさん居るのだが

不思議とヤマシギや蛇類が少ない夜である。

植物たちが雨水で潤い、蒸散を始めたためか涼しい夜なので

たくさんの生き物が出ていると思われたが、思ったほどではない。

 

と、ようやくYさんお目当てのオビトカゲモドキが出現。

Oちゃんの読みは的中した。

 

だが、未舗装の林道にはトゲネズミも比較的多いというのだが

残念なことに見当たらない。

 

舗装された林道へ戻ると、クロウサギの出現が増えてきた。

これはいけそうだ。

クロウサギはホワイトソックスというか、足先が白いのが居て

白い場所はさまざまであるらしい。これは左前足。

ちなみに上の写真は左後ろ足。

固体識別ができないものかとも思うのだが。

 

ふと、何かが上空を横切る。

大きさからして、イソヒヨドリのメスか?と思ったら

K村獣医の目はするどく、リュウキュウコノハズクだ!

おおっ、大東に続く第二弾、野生のコノハズクである。

 

むむっ、長男に尻を向けるとは・・・大東でもそうだったな・・・

あの時もわざわざ向こうからやってきた。

2年前の夜も、確か向こうからやってきた。

でもやっぱり尻向けである。

野生だから逃げ方を考えて、尻向けになるのは仕方ないが

頭くらいこちらに向けたらどうだ。

 

下手な鳴きまねを試みる。

ポホッ、ぽふぉっ、車から3名に凝視されている視線を感じながらでは

鳴きまねの口笛が不発になりがちだ。

やっぱり人数は少ないほうが良いぜ・・・

 

下手ながら、反応はあった。

最初は頭だけ。

 

どっこいしょっと体を入れ替えて・・・

 

ついに体ごとこっちを向いてくれた。

 

片羽がおかしいなと思ったら、枝が脇にひっかかっている。

下手な鳴きまねに動揺したのか、キチンととまれていない。

コノハズクは、どうも畳んだ羽より尾羽が短く、キチンととまらないと

イマイチきまらない。

 

ともあれ、至近距離で撮影できたのでよかったよかった。

コノハズクさん、ごくろうさん。

 

多少上を見る余裕ができたその時、白っぽいかたまりが見えた。

大きさはカワセミくらいである。

アカショウビンの幼鳥だろうか。

うっすらと赤紫に輝く羽がリュウキュウアカショウビンっぽくて

目も光らず、写真写りの良いやつである。

けれど、幼鳥なら色も鮮やかでなく、痩せ型のはずなのに

こいつは頭も大きく、まるっきりカワセミ体形である。

 

道路に張り出した枝の上で寝込んでいたようだ。

往路ではなく復路で寝ていたので、少々車が行き来しても

関係なく寝られるようでうらやましい。

神経質な長男は車の音がしただけで眠れないぞ。

 

結局、トゲネズミは出ずじまいであったものの

最後はクロウサギで締めくくった。

 

と、皆と別れてから山集落へもどる道すがら・・・

ね、ネズミ発見!

これはと思い、あわててシャッターを切るものの

く、クマネズミ・・・

どうも、車にはねられたのか動きがおかしい。

道の真ん中に居たら危ないので、すこし追い立てて道端へ。

すると、人間なら絶対安静かもしれない、動けない体ながら

相当慌てていたらしく、側溝へ逃げ込もうとしてしまう。

悪いことしたな・・・でもあのままだとひかれるしな。

尻がひっかかってかなり苦労している。

笑えぬ、宿の超夕食によって、長男の下半身もかなりやばかった。

 

手伝うわけにもいかず、じっと見守るしかなかった。

 

動物たちとの夜はこうして更けていったのであるが

今回の旅では、どうしても出会えなかったトクノシマトゲネズミと

毎度遭遇しながらチャンスがないアカヒゲ(昼の鳥)が心残り。

(これはメス、オスは顔と胸が黒い)

アカヒゲはどうやら、録音した声を使うと良いらしい。

さっぱり気づかなかったが鳥を誘う定番といえば定番ではないか。

口笛を使うあまり、眼中に無かった。

今度行ったらやってみねば。

 

ともあれ、大挙して行ったのだから、成果があってほっと一安心。

みなそれなりに満足のいく夜だったろうと思う。

撮影に没頭できたのは長男だけだから、多分満足感は

僕が一番だろうが。

 

帰りの飛行機の待合

偶然同じ便でYさんと品川へ向かう友人の演奏家に

写真を見せていたところ・・・コノハズクの写真を見て

これはメスですよ、分かります、という。

スゴイ!この人もタダモンじゃないのか!?と思ったら

おフクロウさんですから・・・・・ってミミズクじゃん・・・

もう二度と徳之島に来られないほどのダメージであった。

 

よう思いつくわ・・・・

こういう気質だから長生きできるんだろうなぁ・・・・

でも、このギャグは真似せんとこ。

珍獣はこんな身近なところにも居たのであった。


ではまた