撮影しながら、思う事

(連続長文警報発令中!)

 


行きのおがさわら丸では、暇とバッテリー寿命があれば甲板に立つ。

母島に着くころには、ちょっと小さいがトビイカの編隊、念願のトビウオ、

あまり気は乗らなかったが、カツオドリの撮影ができていた。

(トビイカの編隊・・・間隔が広いので2匹だけ・・・)

翼がピンク、何トビウオかは未調査)

(どことなくウミウを感じさせるカツオドリ)

ミズナギドリに混じって巨大な翼を見せるアホウドリも撮影したかったが

こちらは羽ばたかないのに速く、すぐに遠くなり撮れずじまい。

 

父島のスーパーでの食料調達の帰りしなに、港でイカの子供たちを発見。

2センチくらいで黒豆くらいしかなくトテモ愛らしいので思わず撮影。

デジタルカメラはいくらでも撮影できるので、なんともありがたい。

 

さて

小笠原は東にあり、朝も早いので午前8時には炎天下。

海も透け透けでベタ凪続き、釣りどころではない。

本来は鳥も早起きだが、木立の間を行き来する鳥たちは

朝10時ごろまでなら何とか動いていることがある。

緑の濃い道や、登山道を探索だ。

本命のメグロはというと、陽光の下には出ないので案外撮影は難しい。

しかも、驚くほど好奇心が強く、林の中で俊敏に追跡してくる。

ISO感度1600にしても、なかなか絞りを8まで持っていけない。

シャッタースピードが1/200秒台を下回ることもしばしばである。

本来ならレンズの長さ分の一秒はなくてはならないので

都合1/640秒より高速で切りたいところだ。

俊敏な小鳥の被写体ブレを防ぐには、なお高速シャッターを切りたい。

撮影するチャンスは多いのだが、何しろ1mくらいまで平気で寄ってくるため

遠くでのチョンという一歩とは、相対的に動きが激しくなり、

ピント合わせが間に合わないことも多く、更に被写体ブレや

視野からすぐに出てしまうこともあって、なかなかコクのある被写体だ。

日照は強いのに、徳之島と違って、葉が透けにくいのか

林の中はかなり暗く苦戦するものの、練習の成果か?そこそこ撮れていた。

(コワ可愛いぞ)

少なくとも観光協会にある、ストロボを使った絵葉書ショットよりは

ずっとイキイキしているように思うのだが。

 

一方、おまけといっては何だが、ハシナガウグイスも元気だ。

最初はウグイスの類(たぐい)が近くに来るだけで感動であったが

オスもメスも時折好奇心の塊になる。

(気が向かず、寄って来ない時は全く寄らぬが)

オスはホーホキョッ!と大声で鳴きながら接近してくるし

メスはたいてい2羽でこっそりメジロのふりをして?接近してくる。

(大接近するオス)

(葉の下から近寄るメス)

こちらも2m以内に接近してくることも、ままあるのだが、何しろやぶが好き。

一段と暗い場所を選ってやってくるから絞りの開け閉めが忙しい。

メグロより少しだけ動きは遅いのだが。

ハシナガというだけあって、多少クチバシが長いが

それより腹の羽毛の内側が黒いことが特徴というか気になるところ。

なんだか少し貧乏くさいぞ。

 

メジロも、面白いシーンのときは撮影しておく。

(何かと物陰からのぞくメジロ)

と・・・?

腹に黒班があるではないか。こんなの他にも居るのだろうか。

足がめっぽう青く、目元、目尻が黒い、おそらく婚姻色が出ているのは

普通に居るのだが。

腹の黒班を見つけたので、メジロも撮影せねばならなくなった。

ちなみに、見つけ出すと結構見つかるメジロの巣・・・

道のそばにはあまりないようだけど。

※黒班はハシナガウグイス同様、内側の毛が外に露出したものかも・・・

 

気づくと、林の中で、時折中型の鳥が逃げ去っていく。

怪しげにピーンっ!という細い声で鳴くのもコイツのようだ。

とりあえず、ピント合わせもそこそこに撮影して見てみると・・・

(ブレ、ボケ・・・)

警戒心のカタマリ、ヌエことトラツグミだ。

不思議と林の中では少し赤く光って見える。

地鳴きは山渓の図鑑では載っていないが、昼間も林の中を

結構鳴きながら動き回っているようであった。

ちょっとした事で警戒するから、ビクビクして移動するのかも知れぬ。

八丈にも沢山居るが、接近を先に覚られるため極めて撮影は難しく

メグロの好奇心を少し分けてやれぬものか・・・と思うばかり。

早朝3時を過ぎたころ、天文薄明のころから日の出前1時間らいまで

口笛のような声を1オクターブ変えながら、ヒィーッ・・・・・フーッと鳴くから

朝が得意な方なら、居ることだけはすぐ分かるはずだ。

なにやら、錆びてきしむ風車がどこかで回っているようにも聞こえる。

この鳥はちょっと手ごわく、あえて小笠原で狙う必要もあるまい・・・

 

と・・・

広い道に出て、脇の立派なガジュマルに感心していると・・・

白い大きな鳥が飛び出してくるではないか!

幸い近くの木の上に停まってくれた。

ピェーェ、ナーァとテレ〜ェっとした鷹のような鳴き方、オガサワラノスリだ。

飛んでいるのは良く見るが、近くで初めて見た。

うろついてみるもんである。

鳴き声はだらしないが、白い姿で青空に飛び立つ瞬間はナカナカ迫力だ。

 

あとはオガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトである。

とはいうものの・・・どちらもトラツグミ以上の強敵ぞろい、焦っても撮れぬ。

ま、足で稼ぐしかないから、運がよければ出遭えるだろう。

 

それにつけても、島内の表示板は、ことのほか自然にやさしいのか

文字のところにコケが生えているのが多い・・・おもしろか・・・・・

 

来たときは誰もやっていなかった港でのルアー釣りだが

僕がやり始めてから、にわかに人が増え始めた。

カメ駄目だ〜サメ駄目だ〜どころではないイルカもやってきて

替え歌すらも思いつかぬほど厳しい局面を迎えた矢先だというのに。

可能性としては、釣ったトド(アオチビキ)を持って帰ったために

宿のオバチャンから情報が漏れたか、港に散歩しに来るオッサンから

漏れたか・・・狭い島内では情報が速いなぁ。

誰かが釣れてから始めるのは群れる魚の時だけ。

僕のルアー釣りは出会い頭の釣りであるから、手遅れもイイとこだ。

 

更に次の朝、その連中はイソマグロと出くわしたようだが

長男は珍しく、漁船が轟音と共に出て行った後、ねばりにねばって

チギことバラハタを釣った。

小笠原では夏場、身が柔らかいのでフリャー(フライ)に人気がある。

48センチ、1.8キロでソコソコの蛋白源だ。

やっぱりラパラのルアーは発明した本家本元だけのことはある。

古臭いが、しみじみ奇跡のルアーだなぁ。

他に、それはきれいな1mくらいのオキザヨリも釣れているが

どうも刺身にしてくれそうにないので、リリースしている。

しかし、エラのところにある班といい、ヒレといいクリアブルーが美しい。

すばやくリリースするため、宙に浮かせたまま運び、ハリから外すため

撮影は差し控えているのが全く残念だ。

 

思うのだが、小笠原沿岸の魚は全く美味しくないかもしれない。

これまで釣れた魚は22度程度の低水温のわりに身が柔らかく、

脂の乗りも今ひとつ。

刺身にならぬ魚は出漁するに足りぬが、今は蛋白源として

釣り続けるしかない・・・のではあるが。

コンディションの良いヒラアジが釣れれば最終判断できそうだ。

南大東と比較すると圧倒的に潮流がユルユルの場所が多い。

むしろ南大東周辺の魚が特殊で、関サバ同様流れの速い低水温で

案外鍛えられているのかもしれない。

 

一方、夜も撮影できはしないかと歩いてみるのだが

近くには程よく結実した木があるのに、オオコウモリ一頭いないのは

寂しい限り。もちろんコノハズクなども居ない。

しかし木陰では怪しく、カサカサ、コソコソと音がするので見てみると

グリーンアノール(移入種のトカゲ)とヤモリ、ゴキブリが歩き回る。

結局のところ、モズも居らず、猛禽はやる気のないノスリだけ・・・

薄っぺらい、あまりにも薄っぺらく、もろい生態系である。

このところ、雑食のヒヨドリが多くなった気がするが気のせいでは

無いのかもしれない。

花の蜜から鳥のヒナまで食べる恐るべきバイタリティで勢力を

伸ばしているに違いなかろう。

この薄っぺらい自然を守るのは並大抵のことではないが

島民はというと、ろくに野菜も栽培せず、庭先には園芸植物・・・

害虫もウズムシも入って来放題であった。

いっそのこと猟友会から学校へ、イノシシとヤギでもプレゼント

してもらうといいのかも知れんな・・・

猫とニワトリは野生化していることだし。

 

まあ、いずれにせよ、人間と希少動物とは相容れない。

失う前に見ておくために来たのだが、少し手遅れだったようだ。

東洋のガラパゴスは植物にはまだ残されているが恒温動物には

全く幻と化しているようである。

 

自然は薄っぺら、さしたる磯もない、魚は多いが美味くない。

周囲の島々に囲まれ奇跡のように穏やかで、隔絶された自然の島・・・

しかし、ことのほか退屈だ。

小笠原に居ながら、すでに次の島を想うゼータクな長男であった。


ではまた