7年ぶりだよ母島は・・・

(連続長文警報発令中!)

 


出発の日の東京、竹芝桟橋はドンヨリしていたが

最近の長男にしてはずいぶんカラッとしている方だ。

大きな荷物で、東横線、目黒線、山手線を乗り継ぐのは

羽田から出かけるのに比べるとずいぶん大変だった。

特二等客室は寝台つきなので、乗船してしばらくは美しからぬ海、

朝も早かったので、遅い朝寝である。

本来だと、関東沖合いに横たわった梅雨前線を横切るときに

雨が降るだろうと思ったが、案外良い天気のまま小笠原に到着。

その間、25時間・・・外洋に出てから、暇なときは甲板に立ち

トビウオ、トビイカ撮影をしていたので、それほど退屈はしなかったが

狭い寝台での睡眠時間も長かったためか、体が寝すぎで痛い。

 

こんなに晴れて良いのだろうか・・・

雨男の運は尽きたなと感じるに十分な晴れ具合である。

母島丸の乗り継ぎは1時間ほど余裕があり

かろうじてコンビニ食だけでやってきた、ひもじいオガサワラ丸生活に

ピリオドを打つべく、スーパーへ向かう。

しかし、弁当が高い・・・荒いつくりなのに700円を超えている。

どうみても500円でも高いぞ。

こうなったら、晩までがんばろう・・・ヒモジイ中にも母島の宿に

ひとときの希望を託し、菓子パン一個で空腹をわずかにしのぐ。

 

母島に着いたら、いきなり宿のオバチャンが、車無いのよ・・・

全部レンタカーにまわしたらしい・・・

ヒモジイ、しんどい、何やら母島生活に暗雲立ち込めたかに思えた。

が、それは度を越えた2日にわたるヒモジ生活のため

心が萎えていただけだろう。

宿は港の近くだと分かっていたし、オバチャンは人が良さそうだ。

 

晩飯の前に、釣り場に近い宿の立地を活かすべく、早速釣りだ。

最低限の仕掛けを組んで、沖港の一番外の堤防へ行ってみることに。

大間抜け日本記録とも言うべき、幻に終わった日本記録の

カンパチポイントへ入ってみる。

誰も釣りしてないが、暇そうな散歩の人がポツポツ通りかかり

そこは釣れないから、もう少し先へ行けというのだが・・・

浅瀬が近いという印象だけで手を出していない島民の釣り意欲に

あまり言葉を信じてはいかんな・・・と改めて思う。

 

そうこうしているうちに、コツンとアタリがあった。

実は小さなルアーに替えてあったので

ちょっと不振気味な海に苦笑いだ。

すぐには走らないで、少しづつ走り出す不思議な引き。

ビビビビビッ!とこれまで味わったことの無い手ごたえと

大きくないはずなのにやたらに強い引きに、なまった体が翻弄される。

ビビビビビッと右へ走り、ビビビビビッと左へ走り、ビビビビビッと潜る。

全くおかしな引きだ・・・やがて姿が見えると・・・・ん?

あ、ありゃりゃ、イソンボじゃん

もっとも釣りたくない魚のひとつ、イソマグロである。

不味い、引きばかり強い、下手すると仕掛けを持って行かれる・・・

の三拍子揃った悪役である。

これで日本記録を登録する人の気が知れない。

何の自慢になるのだろう・・・ホオジロザメに比べたら小さい魚だし。

食べられないほど不味いし。

小さくてよかった、仕掛けを失わずにすんだ。 

ひれの先が白いのに初めて気づいたが、長男の釣りDNAに焼きつく。

二度と釣るまいぞ。

早めにリリースしたが、かなりダメージがあったようでフラフラヒラヒラと

海底へ消えていった。

 

リリースして少したつころ、また何者かが掛かった!

すごい、小さめのルアーしか食わぬが、それでもこの魚影の濃さ

やっぱり小笠原である。

HMSよ、何事にかえてもやっぱり来るべきであったぞと、心底思う。

やつの腕なら、ずいぶん釣れただろうに・・・

コイツはやや引きが鋭いが、ヒラアジよりも休む間合いが長い。

やっぱり最初は走らないで、間をおいて走りだしたのだが

まったく魚種が分からない引き方だ。

イソンボとちょっと違う気がするが・・・似てるなあ・・・

と思った瞬間ジャンプ!ヒラマサのような魚がジャンプした!

ありえない、イケカツオはもっと薄い、あの丸い魚体でジャンプか?!

寄って来た魚を見てほっとした・・・

おっ!アオチビキじゃん、白身魚が回ってるな!

ちょっと妙な掛かり方をしているため、勢いジャンプしてしまったようだ。

これも、イソンボの子供と同様、50センチくらいの小型。

宿の全員に行き渡るか疑問があるので、とりあえずこれもリリース。

 

これだけヒットするのなら、大丈夫、大丈夫・・・と自分に言い聞かせる。

 

が・・・言い聞かせたあと、ヒットしたのはバラクーダ。

母島では食べられるものの、嫌な相手である。

1mくらいあって、食べではありそうだが、どうにも痩せ細っている。

大東なら、もっと重々しく、堂々とジャンプして首を振りルアーを外すが

コイツはダツのようにあまりジャンプもせず首を振り、グネグネするだけだ。

外れてほしい・・・そう思ったがナカナカ外れない。

テトラ際まで寄ってきたとき、やっと外れたのだが、その反動でルアーは

テトラに激突、大破・・・せっかくのヒットルアーが数分のうちに失われた。

 

悔しい、しかしヒモジイ・・・

 

ヒモジさと初日にしてルアーを失った衝撃で、精神的にねばりが利かず

とにかくまともな食事がしたい、そういう気持ちが込み上げてきて

早上がりすることとなった。

これほど食事に執着したのは何十年ぶり?ではなかろうか。

 

ただし、夕食は思った以上にヒモジさを慰めることなく

蛋白源に乏しいものであった。

まる2日、満足に食事もできぬのか小笠原・・・厳しい島だぜ・・・

ビールも持ち込みしかないので、食事もオアズケのまま、前田商店の

裏手にある自販機を目指す。

なぜかモズ博士Tの同期だったという女性研究者が宿に居り

前田商店裏の自販機が健在であると教えてくれた。

世間の狭さを感じる余裕も無く、前田商店へ急ぐ道々・・・

魚は必ず釣って食卓へ、ビールは明日、商店で買い溜めだ

固い決意を胸に、小笠原へ挑む気概が、ヒモジさの向こうに培われた。

  

次の朝、蛋白源奪取に向けて朝一番4時すぎに出漁。

もはや、記録より蛋白源狙いとなった長男の釣りは漁といっても良いだろう。

食べる分だけでイイ、釣れてくれと願って釣るのだが

殺気があると釣れないものであった。

が・・・

ポッパーに何者かが出た!大きいぞ何だ!

食いつかずに追跡してきた魚影に愕然・・・1mはあろうかという

これでもまだ小さいイソマグロ。しかし、掛かったらオオゴトである。

不味い魚を引き上げる、恥ずかしい人間ウインチになるのはまっぴらだ。

 

ホワイトチップ(ネムリブカ)はルアーは食わないだろう。

そう思って、ルアーを食いの良さそうな大型のミノーに交換。

数投したときだった。

コツン、ぎゅぎゅぎゅぎゅ

スピードがなく、抑揚も無いが振幅のある妙な引きが伝わってきた。

ネムリブカがルアーに食わないことは、結構自信があった。

ネムリブカは夜行性で、目ではなく魚の筋肉が発する微弱な電気を

追跡して捕食するからだ。

 

しかし、鋭くない引きの割には、なかなか上がってこない。

しかも、深く潜ることも無い。

魚体もさほど大きくなさそうと判断し、ちょっと足がなまっているので

一応テトラに腰を落としてから、強引に寄せてきたところ・・・

サメじゃん!

こいつは困った。釣ってはいけない魚No.1のお出ましである。

ふと思い出した。

このルアーは、男前なカエシの無いフックを装着してある!

どうにか外せるかもしれない!と希望がわいてきた。

振ってみる、糸を緩めてみる、しゃくってみる・・・何をやっても外れぬ・・・

カエシが無い分、外れにくいようにダブルリングでフックを固定しており

不幸中の大不幸を招いたようであった。

 

仕方なく、テトラを駆け上がり、堤防までごゴアンナ〜イするハメに。

よく見れば、ヒレが白くない・・・まともなサメである。

ノッタンバッタンと悪態をつくのだが、フックは外れぬ・・・

スキを見て、キッチリ記念撮影しておいた。

 

しかし、心理的ダメージは大きく、ルアーは小さいものに交換したが

腰が引けてしまって、その朝は釣りにならなかった。

サメはやっぱり怖いトです・・・

バテない、凶暴、軽く3mくらいになる相手、テトラから落とされると

傷口から出血し、サメを集めかねない恐ろしさがあった。

 

夕刻までには気を取り直し、再出漁だ。

今朝のご飯も、蛋白源は少なかった。

宿の宿泊者、居住者の人数も把握した。

何か足るものが釣れたら即持って帰るぞと、固い決意で臨む。

 

アタリが出ない・・・昨日あたった大間抜けカンパチポイントは

おそらく干潮に近い潮位のために更に前日より浅くなり

食いが悪いようであった。

 

水深があり、足元にテトラがあまり沈んでいない場所を探す。

ある程度の大きさの魚を持ってトントントンと登れるルートも

注意深くチェックし、釣り再開。

 

しばらく投げて、駄目かな〜などと思っていたところ

ゴッ!と当たった。

浅いためだろうか、やはり少し間をおいて走り出す。

それほど大きくないが、そこそこ引く。

仕掛けの強度には自信があるので、思い切って寄せてくると

白身魚、またしてもアオチビキ。食用魚ど真ん中である。

1キロ半あれば何とか足りるが、ぎりぎりありそうだ。

蛋白源を思うあまり、無理やりゴボウ抜きして取り込んだものの

テトラを走りあがる間に外れそうで

エラに手を入れようとしたが、エラく暴れるので断念。

無駄な時間をすごしたので、更に気は急いてくる。

フックはしっかり掛かっている、登ろう!と決意したが

興奮と焦りで足元が怪しい。

思わず一歩目から、先ほど魚を置いた場所に踏み出しヌルで滑る。

余計に焦るハメになってしまった。

堤防までたどり着いてほっ一息。

やはり、小笠原のアオチビキは青くないな・・・

小笠原のアオチビキは薄いウグイス色の縞模様をまとった白銀だ。

なんとなく、目方もありそうだ。

量ってみると、2.4キロ、59センチ、イケル!

十分な蛋白源だ。

 

よく見ると、強度を考えて、やはりダブルリングで固定していた

前のフックはリングごと吹き飛んでおり、愕然とした。

あのリングを跡形も無くぶっちぎるとは・・・

2本しか持ってきていない、よく飛ぶ小型のルアーも一発ボロボロ。

しかし、キズは入ったが、釣果には影響なしである。

 

あくる夕方、静かに蛋白源は、わずか焼き上がりで1センチほどのが

一切れづつのソテーで食卓に上っていた・・・す、すっ、少なっ!!!

アラが汁物になることもなかったのであった。どうなっとるんだ???

 

蛋白源はまだ不足気味だが、天気は馬鹿馬鹿しいほど晴れ倒しだ。

これまでの天候はなんだったんだ・・・と呆れて笑いがこみ上げる。

珍しいことだが、宿では洗剤は使い放題で、物干しハンガーも充実。

それはもう、毎日午後は気持ちよく洗濯だ。乾きも抜群だ。

もちろん、午前は鳥類撮影におでかけで汗だくになる。

腹と足腰を引き締め、代謝量を増やしながら、良い写真を撮るわけだ。

午前8時には炎天下で、馬鹿に暑いのだが、案外充実した島生活。

何しろ、これだけ乾きが早いのだ、汗をかいたら一日二着も

パンツを履き替えられる、夢の南国生活でもある。晴れもイイもんだ。

 

メグロ、メジロ、ハシナガウグイスは、好奇心でキラキラした瞳で

1mくらいまで接近してくる。接近しすぎてピントが合わぬ!!!

小鳥のドアップが撮れそうである。

ついでに、瞳キラキラの女性が寄ってきてくれぬものか・・・と

邪念がよぎる長男でもあった。

晴れたことで、運が尽きるのか?釣りで使い果たすのか?

小笠原生活は始まったばかりである。


ではまた