大東ヘロヘロ日誌(3)

好奇心の運だめし・・・恒例?の写真編

 


長男にフォトグラフィックソウル(撮影魂)が宿る事はご存知のとおりだろう。

今回の荷物は重いレンズなどがあって22キロを越えている。

正直、これで電車に乗り、羽田空港まで行ってしまう自分が、オカシイとも思う。

一方、せっかく装備はあっても気が向かないというか

チャンス!と思わないと撮影しない。

動くものやら、普段近寄ってこないヤツを撮る・・・にしか興味がわかん・・・

という困った弱点からであった。

 

ともあれ

今回の大東には、キッチリとキヤノン一眼レフ+超望遠ビーム砲レンズ、

伏兵として、一眼タイプのデジカメ、パワーショットPro1を持参していた。

釣り場に行って気が散るといけないので、伏兵を用意していたのだ。

これまでの経験で、撮りたくなるカメラを持っていくと、集中力が失われ

結局釣果が振るわない・・・状況が続いているから、セカンドカメラを用意した。

 

だが、そうした集中不要のカメラだったのに、愉快な事に気づいちまった・・・

時間とは、とても寛大で、とても好奇心を醸し出す存在である。

 

これまで、磯でちょくちょく気になっていたのだが、普通のカニだし

撮影はしていなかった。

だが、今回、南大東島の荒磯の頂点にある高幕(たかまく)でやってしまった・・・

折からの釣れない状況・・・崖をのぼって他の磯にいっても多分状況は同じ・・・

ふと見ると逃げ足天下一品、しかし好奇心旺盛な

ミナミイワガニが、リュックまわりに忍び寄ってきていた。

 

ん?

 

長男の心に火がついてしまったのはその時。

こりゃ、じっとしてたら近寄ってくるんじゃなかろか???

近寄ってきて、撮影できたとしてナンボのもんじゃ!と思う向きもあろう。

しかし、長男は関係ない。

これまで撮影していなかったシーン、カニのアップ写真を撮りたくなったのだ。

衝動的に、直感的に長男ソウルが、今こそカニを撮れ!というのだ。

カメラの性能も何も関係ない。

今、手元にあるカメラ(パワーショットPro1)の全てを尽くして撮りたい!

そう思ってしまうのだ。

理由は不明だが、状況が揃ったと感じた瞬間火がついてしまうよう。

道具を愛さないはずなのに、道具を持つと使いたくなるクセがある。

釣りへの集中力はもはや90%減。

 

リュックに乗って調べていたカニは、僕が戻ってきた事で遠ざかっていた。

しかし、また調べに来そうなそぶりである。

磯を見渡せない彼らがどのようにして僕やカバンの存在を察するのか謎だが

いつもの赤いカニ以外にも、黒いカニもやってくる。

予感していたとおり、お?それ以上ジンワリよってくる

 

赤いカニは勇猛果敢である。

黒い方は遠巻きにして、好奇心と警戒心の葛藤が見える。オモシロイ。

 

赤いカニは一匹でこっちにやってきて、カバンだの、僕の足元だのを探りはじめた。

食欲なのか、好奇心なのか良く分からないが、ともかくも自分のテリトリーに

異物がやってきたら嗅覚やら視覚やら、多分最大の影響力の岩の振動を感じ

やってくるようだ。

 

じっと息をこらして、すぐ目の前に来るのを待ち

カメラの電源を入れ、そっと差し出すと・・・一瞬ひるんで後退するも・・・

やっぱりやってきたよ、やってきた!

カメラも独特の匂いがするし、レンズには自分も写りこむから

なんか放って置けないんだろね。

でもオッカナビックリ、すぐ逃げる。

  

逃げては、ごそごそ、もぞもぞ戻ってくる。

赤いヤツは勇猛で、まず最初にやってくる。

 

つづいて、黒っぽいのがやってくる。

 

互いにはちあわせしたら、ちょっとけん制しながら、やっぱりやってくる。

 

Web調べたけれど、ミナミイワガニの活き活きとした写真はほとんどなかった。

こんなにたくさんいて、案外人に接近してくるのに、なんだか全然ない。

 

僕が動かないと、あまり警戒心が働かず、むしろ仲間同士の小競り合いと

好奇心からの大接近に専念し始めるのが分かる。

 

で、やっぱりやってくるのは、赤い大きなハサミをもった、多分オスであろう

彼がやってきて、カメラのレンズを探検し始めた。

キヤノンPro1のスーパーマクロの性能は知らない。

でも結構、超近距離でもピントが合うようだ・・・

ありゃりゃ寄り過ぎ・・・こらこらレンズをつっつくなっ!

ハサミの影はレンズフードの陰である。

 

ピントが合うスピードがモノスゴク遅く、結構ヤキモキさせられるが

ま、あせっても仕方がない

ココは崖の下の荒磯で、カニは目の前におり、カメラはコレしかないのだから。

 

すでにレンズ前ゼロセンチ、というか、ハサミでカチカチと触っている。

  

ややっそんなに接近すなっ!もう写らんぞ

そんなに接近したら・・・

思わぬ接近具合に、長男もちょっと引き気味になるくらい、カニは大胆。

体ごとフードの中に入ってレンズを検め(あらため)ている。

(影はフードの下にはいったため)

お、おおっレンズに飽きたからって、またぐなっ!俺のカメラをまたぐんじゃないっ!

変なカットになってしまった・・・

 

想像どおり、好奇心が抑えられない不思議な連中なんだな。

炎天下の荒磯で、不思議な感覚にひたる長男であった。

小さな体が煮えてしまいそうな炎天下に長時間平気でもあるようだ。

 

赤いオスらしきがじゃれついていると、黒いメスらしきもやって来る。

でも、こいつらは思ったほど寄ってこずに距離をおいている。

中途半端に距離をおいて、食欲もも好奇心も満たされそうにないが

彼女らはそれが普通らしかった。

 

それでも、レンズを接近させると、思ったほど逃げないで

少し逃げては、ジワジワと戻ってくる、おもしろい習性。

ピントが合うタイミングと、カニが良い距離になるのとは違うので

カメラを適当に距離を変えながら撮影してみると

それなりに彼女らの姿を追う事が出来た。

 

ん???

 

何やってんだ?

赤いオスらしきが、何度かおっぱらっても、カバンと岩の隙間を抜けたいらしい。

なぜか、危険をおかしても、この隙間を抜けたいらしい・・・変なやっちゃ・・・

 

カメラを、あえて足にぶつけてやると、ちょっと止まるが、あきらめない。

なして、こげな所をぬけたいんか分からんトです・・・

こだわりがあるらしく、全然あきらめない。

結局ひっかかって、駄目だったんだけどね。

 

愉快な荒磯撮影は無事終了・・・って結局釣れずじまいであった。

 

一方、ビーム砲レンズを持っていった手前、スイレンと鳥を撮影したかった。

釣りが厳しそうな事は遠征前から先刻承知だったので、カメラ装備は充実してある。

 

スイレンは、この時期、ほんの一瞬満開になる。

大東神社の木漏れ日に浮かび上がる姿はナントモ捨てがたい。

動かない被写体なのに、珍しく何度撮っても、また撮りたくなる。

ベニイトトンボとのコントラストも捨てがたい・・・

今年の花びらは、きめが粗く、ちょっと凸凹しているのはナゼだろうか。

 

上では、木立をぬってやってきたダイトウメジロが好奇心むきだしで接近中。

今回、ダイトウメジロを追跡中という研究者のためにも思わず撮影!

見た目には普通のメジロなんだが・・・

でも、

メジロはこういう大胆でアクロバティックなしぐさがとってもカワイイから

撮影する方としてもとってもトキメクやつなのだ。

思わず何ショットも連射してしまう。

 

ついでに、スイレンの葉の隙間にたゆとうテラピアも撮っておいた。

 

スイレンだけでは、せっかくのビーム砲レンズの意味が無い。

何か大東ならでわの鳥を撮影したい!ということで

モズ博士Tに問うてみたら、あっけらかんと

シマアカモズを撮影せよ、とのこと。

研究者らは、捕獲したり、血液を抜いたりするので警戒され

思うように撮影できないという。

 

モズごとき、お安い御用、任しとけと軽く承知し出陣。

しかし、なかなかシマアカモズらしいモズは出現しない。

 

教わった第一のポイントでは、普通のモズしか撮影できず

次のポイント・・・ありゃ・・・どこだっけ、この辺だっけ・・・

と思っていたら、目の前の電線にモズがとまった!

とりあえず撮るのだ!と撮影したのがコレ。

とりあえずもなにも、これがシマアカモズだったそうな。

 

ちょっと細身で、メリハリのある色調が印象的。

けれど、やっぱりどう見ても瞬時には理解しかねる差異であった。

研究者曰く、

「モズよりエレガント」

なそうだが、言われるまで分からんぞ・・・モズ博士Tよ・・・すまぬ・・・

釣り人には分からぬよ・・・この程度の差は・・・

 

ともあれ、撮れて良かった。

 

はたまた

とある朝、南大東で最も高い食堂から、食事中に赤い鳥が飛ぶ姿を発見!

以前目撃したアカショウビンか!?と思い、ビーム砲レンズをもって出撃。

アカショウビンは徳之島ではオナジミだが、南大東では極めて珍しい。

 

だが、宿で見た池のほとりには、赤い姿はどこにもない。

ん?

サギなのに、見た事も無い姿のヤツ!

とっさに、背景の茂みにピントをまかせて、撮影した。

カメラのピントは、遠くで動くものに弱いから

とっさに同じような距離の背景の草木にピントを合わせてシャッターを切る。

 

ナニモノだ???

サギ類は警戒心が強く

茂みから出てこず、結局まともアップでは撮れないが、この程度は撮れた。

あとで研究者M井君に聞いたところでは

珍しいのだが大東にはチョクチョク来るらしい、アカガシラサギとのこと。

華麗なる背中のV文様がたまらないサギであった。

 

おっ

赤い鳥が横切る!

・・・

サギじゃん・・・

 

これもM井君に確認したらリュウキュウヨシゴイとのこと。

サギの多いお土地柄である。

M井君によれば、東アジアのほとんどのサギをこれまでに

記録しているとのこと、サギ銀座じゃん・・・

結局、アカショウビンの証明は出来ずじまいとなった。

 

ところで

研究室で撮影してもらった、輝かしい記念写真を紹介する。


上はM井君がマットウに撮影したもの。

下は鳥類学者兼釣師T博士が意図的に撮影したもの・・・

魚の巨大さが違うぜ!

手の大きさでバレバレだが、ぱっと見せられた瞬間

フィッシングインパクト?が強いので、釣り人的ライバル心を強烈にくすぐる。

釣り人の心をワシヅカミにする写真はこうして撮影されるのだ・・・

 

絞りをコントロールし、被写界深度を深くして撮影するあたり

なかなかやるな、Tよ・・・手馴れてるぜ・・・インチキ技だけどな・・・ 

 

以前、キヤノンIXYでカツオドリの飛ぶ姿をドアップで撮影した

衝撃のショットでドギモを抜かれてから少し経つが

実はずいぶんとカメラの使い手であるようである。

まだ、一眼レフではドギモショットは見せてもらっていない気がするが・・・

今度は、お気に入りの300mmLレンズのスーパーショットで

またドギモを抜いてみせてくれよT博士。

 

今回は、釣りにカメラにと欲張ってしまって、集中力をそぎ倒す旅であったが

あちこちアレコレとかなり楽しい10日間であったことは言うまでもない。

 

最近、おやじ味(み)が深くなったせいか?

関心も好奇心も集中力もどこかへ行ったようで、どんよりと悩ましい日々が続くが

この10日間だけは、半分くらい戻ってきた感じであった。

もう半分、なんとか近々取り戻せないかなぁ・・・


ではまた