釣り人のロマンながもち

 


最近、めっきり魚が釣れなくなったせいか

釣り道具にロマンがなくなった。

 

というか、釣る以上に持つ喜びとか

やたら少なくなった魚を追い求められますとか

希少価値で小学生に高額なルアーを

しかも抱き合わせで売りつけますといった商品まで

なんだか違う方向にサンザッパラ走りつづけている。

 

肝心の魚が居なくなった・・・というのはどうしようもないのだが。

 

まあ、釣り人が減る事は、鉛(おもり)を投げ込む確率が減るから

自然には優しくなれるわけで、いいことかも知れんが。

 

レアな釣り方をする人間の道具は極端に少なく高価なったか

もしくは全く生産されなくなった。

それはそれで、そのジャンルの道具さえ持っていれば、

細々とでも豊かになって回復していく魚を狙えて

嬉しいことの反面、道具がボロボロになっ

て困ってしまう両局面をもっていた。

 

長男の夢の一つは、ヒラスズキを釣りつづける事である。

この道具が非常に最近売れない。

ワザワザ命がけで、1mになるかならないかの魚を

荒海の磯で釣る人間が減ってきたということだ。

これは同業者が減って嬉しい事だ。

だが、竿が折れてしまうと後がない

今もっている竿も、既に10年選手である。

良く見ると、ガイド(竿についている糸を通すリング)の足も

所々折れている・・・

この竿はこれまでにヒラスズキを釣ってきた相棒である。

15フィート(4.5m)の竿は、個人的にはさほど長いとは感じぬが

巷では長すぎるらしく、メーカーではほとんど作られなくなった。

 

幸い、バブル当時の竿は非常に素材が良いので

竿の根幹自体は傷んでいない。

 

とりあえず、部品交換をしてみることにしたのである。

 

ご想像のとおり、釣具の部品の在庫はほとんどない。

知る限りの手を尽くして探してみると・・・あるんだなこれが。

好きな人には、それなりのお店があるものだ。

所は日本橋。

(言わずと知れた国道の起点がある)

竿を作っている珍しい釣具店である。

そこには探していたガイドが全種類置いてあるという。

これは、世界に冠たるガイド専門メーカー「Fuji」の製品を

日本でただ一箇所、全品常時在庫している、釣具店の中の

釣具店といっても良いお店であった。

長男は、別の釣具店で教えてもらって初めて知ったが・・・

 

思ったより構えの小さなそのお店には、市販されていない

強力なブランクス(スッピンの竿、棒みたいなもの)で

世界最強?の13フィートロッドを作っていて

お客さんの中に、それで南大東の磯から19キロのヒラアジを

あげた人が居るというから、トンビにアブラゲさらわれた気分すらある。

でも、どうも長男のフィーリングには合わぬ竿で

しかも中物狙いには向かぬ強力無比な逸品である。

ちょっと心が揺れたが、いつか大物を狙いたくなったら

求める事にして、お店をあとにした。

 

ようやく手に入れ、そろった部品。

だが、バッチリ合うものばかりではないし

ちょっとばかり改良したいところもある。

 

純正の部品では小さすぎて、糸の出が悪かった

一番大型のガイドを、更に一回り大きくしたかったのだ。

 

だが、大きなガイドは太い竿用のため、僕の竿にはス〜カスカ。

なんとか合わせねばならぬ。

 

竿の改造は、あれこれやってきていたので

コレくらいは作戦がある。

 

さて、工作の時間だ。

 

まずはガイドを合わせたい部分にうすくテープを巻いて

接着剤などが直接付かないように保護する。

(ここでは、荷造り用透明テープを使用)

このとき、テープの分だけ太くなるので、ガイドがやや太い方へ

ずれて作られるので、やや細い方を狙って巻いておく。

 

それから僕の場合は竿などに巻く滑り止めの糸を使うのだが

先の場所に下糸をキッチリと巻き

瞬間接着剤をたっぷりと染み込ませる。

 

一層巻いたら一晩乾燥し、更に二巻き目を丁寧に行っていく。

 

この場合3層で終了。

ガイドがすれすれ入るいい感じの太さに「たまたま」なってくれた。

通常は細めの糸を巻き足して調整し、すれすれに持っていく。

 

その乾燥が済むと、今度はエポキシ系接着剤を練り

たっぷりと付けてガイドをはめ込み、接着剤を十分に行き渡らせるため

回したり、前後させたりして、くまなく接着剤を隙間に入れていく。

念を入れるならば、一度抜いて、もう少しだけ接着剤を塗り

もう一度ユックリ入れ、何度か回してなじませると良いと思う。

 

エポキシの化学反応は速いが、とりあえずやっぱり一日置く。

 

さあ、これをどうやって抜くか?これはちょっと悩ましい。

今回、長男は失敗してしまった。

竿に傷を入れてしまった・・・

 

後で分かったが

まず、無駄な部分の下巻き用テープをはがしておき

更に竿の太い側にしっかりと保護ガムテープを貼る。

モンキーレンチをガムテープを巻いた竿の太さにあわせて噛ませ

竿をコンクリート等の硬い地面に「厚く」新聞を敷いて立て

モンキーレンチの上からゲンノウ(トンカチ)で叩いて外すのだ。

結構勇気が要るし、軽くたたいているつもりでも、ガムテープが破れ

竿に傷が入ることがあるので、二、三回たたいたら入念にチェックし

ガムテープを張り替えながら、コツコツと回したたき、外していく。

ある程度コツがつかめた頃にポロっと外れるはずだ。

 

あとははみ出た糸や接着剤をカットし、耐水ペーパーなどで

軽くすって仕上げる。

毛羽立ちがある場合は、薄く端面のみに瞬間を塗って仕上げる。

案外、糸はテンションを持っていて、巻きつけたときの力を覚えており

ちょっときつめに仕上がる事もあるから、そういう時は慎重に内側を

400番くらいの耐水ペーパーで磨いて、すり合わせていくと良いと思う。

 

長男は今回、あまりにシッカリと接着した下巻きに恐れをなし

まずカッターで不要な接着部をカットしようとしたが

これが案外と竿まで到達しており、この竿の最も美しい部分である

透明なガイドロック(ガイドを回らないようにするギザ加工)に

みごと切り目を入れてしまったのであった・・・

 

この切り目をどうやって目立たなくしようか、まだ策はない。

教訓のために置いておくか・・・

 

ともあれ、竿の強度には何の問題もない。

とりあえず、竿自体は前より良くなった。

 

この竿は前からアチコチ手を入れてある。

最初の劇的改造が、この竿尻延長&カウンターウェイト。

大阪で釣具の好きな鉄工所のオヤジさんが、ステンレスで作ってくれた。

竿尻が長いと、向かい風でも力が入り、ルアーの飛距離が伸びる。

竿尻が重いと、先が長い竿も楽に持っていられる。

ちょっと格好悪いが、ヒョウタン型のグリップも使い心地はいい。

ステンレスには熱すると縮むゴムカバーをかけてある。

 

竿とリールを握る部分には、杉材で作ったグリップをつけてある。

北風にかじかんだ手でも、親指がひっかかり、力が入れやすい。

杉材を手に合わせて整形し、コーティング、塗装、またコーティングし

硬く仕上げてある。

工業用で最も強力な両面テープをパソコンの技術屋にもらって貼ったが

はがれる様子は全然ないから、すごいもんだ。

 

こういった改良を重ねた道具だから、なかなかオイソレとは

ほかの道具には切り替えられぬものである。

 

大波と強風、荒磯と恐怖をともにして

ヘタな長男が貴重なヒラスズキを狙い、あげてきた奇跡の竿である。

 

これからも、命を預けていかねばならぬ。

 

ん?ありゃ???

 

最後にカバーをかぶせようと思ったら、さっきのガイドが太すぎて

カバーが入らん・・・

う〜む、ココまでは想像だにしとらんかった・・・

仕方ない、一回り大きなカバーを買いに行くとしよう。

 

これから先、どれほど持ちこたえてくれるか分からんが

10キロのヒラスズキを上げたら、引退させてもいいぞ。

お互い、遠い道を行かねばならんなぁ・・・宿命なんかなぁ・・・

ふと、竿に語りかけてしまう長男であった。


ではまた