大島の磯は

和みの磯

 


遅くなったんで、八丈よりBフレッツでアップロードしています

すごい時代になったものだわい


1994年に横浜にやってきたとき

もはや釣りのフィールドは関東にはないのではないか・・・

などと勘違いしたものである。

 

しかし、長男が訪れたのが伊豆大島であった。

定期船に乗って釣りなんかしたことがなかったので

小さなサラリーマンである長男には、ちょっとした冒険だ。

 

当時も今も、伊豆大島のレンタカーは法外に高価だから

今もって借りぬが、10年前の長男はバスを選んだ。

定期船で島に渡り、バスで釣り場まで・・・そんな事が

そんな安直な釣り道中があろうか・・・

 

案外、行ってみたら、先輩方も降り

先達あらまほしき・・・どころか先輩もバス通いである。

むろん、初対面で、後から見知った仲だが

磯には少なからずバス通いの先輩がいらっしゃるのである。

 

もう10年

 

ヘタッピなままできてしまい、コダワリばかり強かったが

伊豆大島の海は、ことのほか優しかった。

ただ、こと昨年からは違うが、それでも伊豆大島の海は優しい。

 

カンパチ、ホウボウ、ヒラメ、イナダ、マダイ、ヒラスズキ、ハマフエフキなど

釣れる魚は、否、釣られていただいた御魚様はみな美味い魚揃い。

もっとも、この御魚様を釣るために、長男は恥ずかしい釣り方を

このあたりでは誰も予想せぬ仕掛けを使って、釣らせてもらった。

 

マニュアルにはない釣り方がアレコレ見つかっており

もちろん「この釣り場」しか駄目な仕掛けもあって

それでも、伊豆大島で修行させてもらったからこそ

南大東、小笠原でも思いもよらぬ御魚様に出逢えたのだ。

 

ま、釣り方をマスターしたとて

本来は自然剥き出し100%ピュアな御魚様なら、技など要らぬ。

鍛えぬとも釣れてしまうはずなのだが、苦労するということは

半分以上、何らかの人間の悪影響があると思わねばなるまい。

釣りが上手い!というのは、それだけ自然が侵食された環境でこそ

語られる言葉であろうから、こと現在の日本で釣り名人に会うのは

環境なり、汚染なりを人間が犯してしまってから存在する

腕利きに違いない事だから、微妙だ。

 

でなければ、紋別で目撃したように

だれしも釣りに行き、だれもが釣れて、だれしもが味わえるはずだ。

そこで、名人を競うことなど意味がないはずであった。

 

ま、カタイ話はおいといて

長男のくつろぎの場所は、故郷でも自分の家でもなく

通いなれた磯など、太平洋を臨む岩の上であった。

 

本来は緊張の場所であったが、いつしか険しい磯は

地球の素顔だと思えるようになったのか、荒磯こそ居場所になった。


 

はたまた

今週も大島に行くことができたから、長男の幸せソノモノである。

職場でも理解をしてもらって、金曜夜の大島航路で釣りに行くことができる。

38歳ともなれば、普通ならバリバリ仕事して残業しまくり

お子様を育てるのだろうが、長男には家族も子供もないのだから

たった一つの生きる意味である、磯釣りに行くことを理解してもらえる事とは

バリバリ残業と同じ生きる重みだが、見た目も人類的意味合いも全然違う!!!

それでも理解してもらっている上司には感謝の念がつきぬ。

本当にありがたき事である。

 

さて

10年の感謝を無にすることなどできぬ。

先週に引き続き、今週も伊豆大島へ行くのだ。

今週は潮が悪いのだが、今年初の週末西風シケ持続事態発生!であった。

そうなれば、ヒラスズキを狙ってでかける以外ないではないか。

西風が吹きつづけたとき、3mの波が伊豆大島を洗うとき

ヒラスズキは気まぐれに回遊してくれる。

その気まぐれに出逢うために

狙いすましたか?のように思い込みを強め、出かけることが

また楽しいのである。

 

背後には三原山、眼前には箱根に富士山

これ以上の絶景を背負った釣り場が日本にあるか!!!

釣れずとも出かけたくなるのは、多分、日本の長男だからだろう。

 

とはいうものの、釣れぬ時は暇である。

富士山も霞んでいる時ならなおさらである。

朝、沖合いを行き来し始める高速船なんぞを撮影しながら

海を見つめている事になる。

 

多少かすんではいても青空が示すとおり、空気のうまさは格別。

 

火山岩でできた赤い磯の表情も

もはや心に安らぎを与えてくれる見慣れた存在だ。

 

それでも、こんな事態ごときは予め考えてあって

こんなとき実は竿のテストをすることになっていた。

テスト用の道具を持っていっているのである。

カンパチを釣りに行く場合、二種類の道具を用意する。

すなわち、沖や、深い海底を狙う、重いルアーを投げるものと

手前の水面や水中を繊細に狙うものである。

だが、ヒラスズキは一種類の道具で十分だから

余裕が出来たぶん、テスト用の道具を持っていけるわけだ。

 

今回は、以前南大東で使用して挫折した

インターライン(中通し)の竿をヒラスズキに用に使えないか?と

思いを募らせてのテストであった。

(白い方がインターライン)

インターラインの竿は磯釣り用に普及しているが

案外ルアーでも都合がよいはずなのだ。

 

竿には一般的にガイドとよばれる、釣り糸を導くリングが

点々とついている。

インターラインは竿の中を通すので、このガイドがない。

ただ、中を通す必要があるので、竿が太めだ。

太くてもしなやかに作るのは難しかろう。

 

ガイドがある竿は、ガイドが回転してしまったり、

重いものを投げる瞬間、ガイドが回転して、オモリの方を向く。

 

たとえば同じような原理だが

竿を普通に水平に保って、重いオモリをぶら下げたとすると

ガイドを竿の上にしていても、タユンと穂先がねじれて下を向くか

竿を握る手の力を緩めると、竿が回転しようとするはずだ。

オモリの重さに逆らわない方向にガイドが向くのが自然である。

すなわち、竿を使うには、方向があるのである。

 

しかし、中通しの竿には、その方向はない。

穂先までが筒となっているだけだからだ。

投げるときも、魚が強く引いてあしらう時に横っ走りしても

いつも竿の力を均等に発揮するのだ。

 

一方、ヒラスズキは強風の時に狙う。

風の中で、ルアー竿の中でも一番長いヒラスズキ用よりも

更に長い磯投げ竿を転用し、更に太いインターライン。

これは体力とともに、感度や、向かい風でもピンポイントで磯際に

ルアーを投入できるかどうかが、気になるところだ。

 

案の定、微妙な操作も難しく、風が吹くと腕力の消耗が激しい。

だが、新たな発見があった。

インターラインの最大の弱点は、竿の内面に糸が触れるので

接触面積が広いため、糸の抵抗が大きいことだ。

しかし、これが幸いすることもあったのだ!!!

 

ポッパーというルアーがある。

これを魚に食わせようとして水面をアクションさせる。

たゆんたゆんとユックリしゃくると魚には弱った魚に見えるハズなのだが

当然糸の方はたゆんでしまう。

リールはたゆんだ糸を巻こうとすると、巻きムラができ

次に投げるときに、ゆるく巻かれてしまった糸が

糸の勢いに負けて、ドドッと、ゴワゴワっと一度にでて

もつれてしまう事がままあるのだが

竿の内面に触れて抵抗ができることで、巻き取る糸のたゆみが少なくなり

トラブルが起きにくいことが分かったのだ!!!

 

これは存外劇的である。

 

竿の内面の抵抗は、太い糸ほど大きいが、今はハイテクラインの時代。

細い糸が十分に強度を保っている。

飛距離が伸びにくいことが弱点だったが、全く以前ほどではない。

それに、八丈島で使うルアーなどは重く、糸の抵抗をものともしない!

それにポッパーというルアー自体、非常に飛びやすいルアーだったのだ。

これには驚いた。

その昔、ルアー用にもインターラインの竿があったが

時代が早すぎたのかも知れぬ。

今は細々と、イカの餌木(エギ)釣り用に残るのみ。

残念なものである。

ま、最もリスクの大きいポッパーを多用する人類が少ないのだから

飛距離が伸び、安価に作れる竿が優先されて然るべきなのだが。

 

ということで、こだわる長男ならではのトライアルであった。

先週号に書いた、ガレッジ・ゴリ風男がルアーで磯投げを使っていたが

実は長男も、それに先駆けて、先月から準備をしてあって

チャンスを狙っていたのであった。

 

6キロ程度のカンパチならば、パワー負けしないで頑張れるハズである。

それ以上になったら想像がつかぬ。

長い竿は魚の引きの影響が強く、支えていることが辛いのだ。

だが、長い竿はしなやかで、仕掛けにかかる引きのパワーを

分散させてくれる良さも大きい。

 

パワー負けさえしなければ、竿は長い方がパワーも味わえ

力をいなし、磯際で岩をかわすなどの技も使えるので、実は面白いのだ。

パワー負けすると、磯から落ちるけどね・・・。

 

ともあれ、テストは終了。

良さも悪さもわかった。

 

10時半には磯をあとにしたが、出帆は14:50分だ。

アレコレじゅうぶん道草を試みる。

 

途中、これまで気にもしなかった松の木が魅力的だ。

暇とは味わい深いものである。

ヒラスズキを釣るためのシケを作る西風にあおられて斜めに生えた松。

いい味である。

 

こんな撮影をしながら、ジョギングやお散歩する人たちに挨拶しながら

変なオヤジの質問にも答えながら、十分道草して、元町港に向かう。

昼飯まで余裕があるので、港の桟橋で釣ろうと行ってみたが

おりからの冷たい強風(木枯らし一号だったようだ)の上に

長い竿しか持ち合わせず、着る物も薄手であったから、あえなく退散。

 

早めだが、ゆっくりと食事をすることにした。

もちろん安部森さんである。

今週はメダイのベッコウと決めていた。

ベッコウは、おそらく注文してから、魚を切り、醤油ダレに一瞬つけ

ざるに並べて、ほどよく味をなじませながら、テリを出す。

ベッコウ丼とはこのタレのなじんだ刺身が、テリを出した姿が

べっ甲のような色合いだから、そう呼ぶのだ。

早い話が、八丈や南大東で食べられる島寿司の素材をそのままに

どんぶりに盛ったもようなものだ。

見た目の簡単さ以上に時間が掛かる料理だが今日はドントコイである。

店のおばちゃんも、僕の顔をしっているからか?暇そうだからか

前の様に時間がかかりますけど・・・などとは言わない。

ビールと、ビールに付いてくる明日葉のオヒタシでユックリ待つのだ。

 

別のお客さんが、クサヤを頼んだ!

 

し、しまったっ!クサヤもあった!

自宅では高レベルの悪臭が住民を襲うため

決して町内では、人道上焼けぬ食材であった。

だが、大島では生活の一部だ。住民からはクレームは出ぬ。

正味、食道に会する客が不快なだけというか

味わわなかった者負け状態なだけだ。

 

昨年から、ついにクサヤを克服した長男。

病み付きになりかけていたのであった。

 

次はクサヤを頼むぞ!とベッコウ丼をほおばりつつ、既にクサヤ浪漫が

頭を駆け巡るのであった。

だが、クサヤ浪漫には小さからぬ課題があった。

クサヤは、日本酒やお湯割り焼酎でいただくと美味しい。

然るにすきっ腹では、ちとしんどいメニューである。

それに、メインの食事を選ぶのも難しい。

先達たるお客達がオーダーしたのは、ラーメン、もしくはソバであった。

ざるそばでなければ、そばで決まりなのだが・・・

季節がら、あたたまるメニュー、それでいておなかが張り過ぎない・・・

それが見当たらないのだ。

定食はヘビーすぎるし、土産屋兼業の食道では微妙な存在だ。

食卓を支援してくれる、同行者が必要かも知れぬな・・・

 

とりあえず、次の週末は八丈だ。

客が少ない時に、出してもらおうか・・・などと作戦捻出にも余念がない

暇を持て余す昼のひととき。

 

食べ終わったのだが客も少ないから、NHKの生活笑百科を

じっくりゆっくり見てしまった。

カミヌマエリコとツジモトシゲル、そして懐かしいノッポサンという

類まれな組み合わせとかけあいが、暇すぎる食後のヒトトキをほのぼの彩る。

 

食後は待合へ移動。

昨夜の船中で少なめであった睡眠が睡魔を呼び

またしても二階のベンチを占拠し

更にまたしてもやってくる怪しげな掃除オバンの掃除機攻撃を無視して

眠りにつくのであった。

その後、2時間は夢かウツツか、文字通り瞬く間に過ぎていった。

 

帰りの船中、最近めっきり増えた韓国旅行客に包囲されたが

気にせず帽子を頭に掛け、うとうと寝てしまう。

10年か・・・この身はずいぶん、オヤジ進化をとげたようであった。


ではまた