きびしま、いやしま α号

静かな海、険しい海

きびしま、いやしま、あるふぁ号

 

いたって激しい始まりであった。

 

初日の夕方には足元で6〜7キロのロウニンアジが

明くる日の夕刻には1.5mはあろうかというバラクーダが

水面を割り、ルアーに食み後を残していった。

 

ルアーに反応して小魚やトビウオが跳ね

とても元気のある海に、当初ワクワクしていたのだが・・・

 

なかなかルアーに反応がない。

大東の釣りはシケがポイントである。

人間が生きて帰る事の出来るくらいのシケがある磯で

釣りをするのが最も釣果があがる。

 

最近はめっきり釣れなくなってきており

前はシケでなくても釣れていたものだが

凪の海では全く釣れない、そして昼も釣れなくなってしまった。

さらに、装備ばかり重くて小さな魚しか来ないジギングなどは

やらなくなったので、コツコツ稼ぐことはやめているのも影響している。

 

それに、粟国に行ってしまった

名古屋系ダイバーY田総帥が言っていたように

水質が変わっていることも少なからず響いている気がする。

 

とはいうものの、やっぱり

「南大東は磯際にこだわりたい」

というのがこのところの信条である。

釣りにくくなったとはいえ

足元近くで大きな魚を釣れる島、水深のある南大東ならでは

と思うところである。

 

磯についてちょっと詳しく書いてみたい。

特に今回のように大潮の時はこういう磯に乗る。

足元の岩だな(〜6m)の部分にV字の割れ目などがあるところでしか

引いてきたルアーがピックアップできない弱点はあるが魚の活性は高い。

(V字溝がないと、ルアーが岩だなの角に引っかかってしまう)

(潮がやや引いた状態)

V字溝の中にも障害物があるので注意しないとルアーを傷める。

 

波がないところでは魚も岩陰に居り

大型魚も自分の姿が小魚から丸見えのため

あきらめ気味に回遊するから活性が低く釣りにくい。

浅瀬の部分には多くの魚が波打ち際まで群れている事が多く

波間に群れが見えている。

(分かりにくいが・・・)

 

こういうときは大型魚が沖へ回遊してくれば

波が立ち上がる部分より沖へ投げてやり、浅瀬に引いてくれば

追いかけて食ってくる可能性が高い。

浅瀬には積極的に入って行かないが

弱った魚が一匹だけでふらついていると飛び込んでいく

そんなかんじだろうか。

 

魚はこんな感じだが

実のところ、人間には肝の冷え気味なオトロシイポイントでもあった。

足場は図解のようにバスタブ状のことがままある。

へっぴり腰でよろめきながら竿を振るのがやっと、ということが多い。

しかも浅瀬になるところで急激に波が高まり

帰る波と寄せる波がぶつかって巨大な三角波が出来るので

気分的に圧倒されたり、しぶきをかぶって動揺しバランスを崩して

滑落してしまうことなどがあるのである。

南大等の磯は心身共に要注意だ。

 

今回は、魚がかかったらバスタブ状の中に入り(水溜りだが)

思い切ってファイト出来るようにイメージし、釣りを開始している。

釣り方から取り込みまでしっかりイメージを作っておくことが

ちょっとばかり危なげな環境下でお魚を捕るキモとなるのだ。

 

ここは国京下というポイントで、大潮の時の満潮前後の

延べ一時間くらいが釣りできる。

(右上の方)

東側(右側)は常に波が高いため、魚の活性が高く

それに人出も少ないので魚が豊富のようだ。

 

前の日の夕刻、6m近い岩だなの先端に魚が差し掛かったとき

ポロリと取れてしまった教訓を胸に、その朝は釣りをしていた。

 

のだが・・・

今度の旅でも、ライントラブルは結構多かった。

その時はなんと、40mくらい糸が出たところでモツレができた。

こういう場合、一端、水面に浮くルアーを付けて沖に投げ

糸を出した状態でモツレをほどこうと思ったのだが

波の力が強くて、ルアーが岸に打ち上げられそうに寄ってくる。

糸がたるみ、怒涛にもまれ、磯に絡みそうになっている。

やむなく無理矢理モツレごと糸をリールに巻き込み回収、

糸を絡まないように水溜りに慎重に放ちながらほどくことに。

 

ほどなく、モツレ解消し、ルアーを昨夕のヒットルアーの

シンキングミノー(沈むタイプの魚型ルアー後述のカスミアジで使用)に

交換しようかと思ったが、ふとコレも何かの縁だから

一度引いてみてから交換すべしと思い立った。

 

釣りはつくづく運である。

 

水面をトビウオのようにシブキを上げながら進んできたルアーに

横から波を割って魚が襲いかかり、一発で掛かった。

ギュウウウウウッ!

直後、リールとなく竿となくこんな音がしていた。

すぐさま水溜りのあるバスタブの底へバシャッと下りてファイト開始だ。

水面を割った魚の大きさよりかなりオーバーで強烈な締め込みがある。

食い方、引きの強さと感触からして、ヒラアジ系間違いなし。

昨夕のこともあり、何度もアワセ(ハリを刺すために竿をあおる動作)を

入れて念入りにハリ掛かりさせておく。

 

せっかく掛けた魚、渋い中で食わせた魚、絶対捕らねばならぬ。

 

今回は徹底的に弱らせなければならない。

しかも岩だなの向こう、荒波のあらう浅瀬部分でである。

それ以上沖へやってしまうと、根に回られたり

V字のところから遠ざかり取り込みが出来なくなるからだ。

釣り人の習性として、糸を自然と巻き取ってしまい

魚が岸に寄ってしまう。

岩だなの向こう側ぎりぎりに魚が接近し、糸が岩だなの角でずれそうになり

あわてて糸を出してやろうとするのだが、魚の引きが強いので

カラダが勝手に興奮し、手が震えてナカナカ上手く行かない。

 

実は、魚が岩だなに接近することは予想しており、根ズレに強い

いや、極めて強い仕掛けにしてあった。

道糸5号PEとハリス26号の間に、しなやかな14号PEのリーダーが

加えられてあり、糸の出をスムーズにしつつ、強度を上げてある。

糸が切れる心配はないので、気分的には楽に

やりとりできているつもりだった。

 

この「気分的に楽」というのが武器になる。

少しでも冷静な判断をする手助けになるからだ。

 

白銀の魚体が波間に見えたときロウニンアジと分かった。

サイズは思ったとおり小さい。

(脳裏には食べごろだな、と嬉しい思いがよぎっていた)

大丈夫、捕れそうだ。

 

弱らせるために、魚が休もうとすると竿をあおって刺激し

沖へ逃げる動作をわざと起こさせて疲労させることを思いつき

何度もやって魚を弱らせた。

仕掛け強度の限界を超えた大型魚では出来ない技だが今回は安心。

弱らせると美味しくなくなるが、捕らねば食べることも出来ぬのだ。

 

弱ると、計算外に魚が波にあおられ、打ち上げられそうになっている。

V字のところまで誘導できないうちに、岩だなの際にきてしまった。

 

ドンっ!と岩だなに打ち寄せる波に何度か乗せてみて

なんとか岩だなを超え足元まできた。

あとは

運を天に任せ、竿を立て、糸を手で持って手繰り上げるしかなく

魚がやせていたこともあって、わりあい簡単に手繰り上げられた。

 

満潮しかできないシケ気味の磯の釣りで、初めて魚が捕れた事実に

サイズ以上にものすごい喜びがこみ上げてきた一尾である。

朝日の磯で、久々にガッツポーズをやっていた・・・

おお、食いが悪いということはお腹が空いていてもカラダが動かず

極限まで腹が空いていたという事・・・だから

口より先に腹が食いに行った!!!

スゲ−(ウソです)

いや、腹が減って手元が狂い(口元だが)逃がしかけた魚に

ボディーアタックを食らわせて失神させる技があるのだ・・・

スゲ−ぜ(真っ赤なウソです)

 

とゆうよりも岸際の波で暴れるルアーに食いつきに行ったら

口より先に脇が掛かってしまった・・・というところだろう。

 

ともあれ、久々に手ごたえのあるやり取りができて嬉しい

体中から、そういう感覚があふれてきて、最幸の気分である。

 

こうして、興奮を覚ましながら、撮影してしまうから

次の魚が釣れず、腕がさっぱり上達しないのだが

興奮したままガケップチにたって釣りをするのも

どうかと思うところでもあり、微妙な釣り方であった。

 

 

これに先立って釣れていたのが、大好きなカスミアジ。

大東そばからアップロードした先々号のやつである。

(つい写真に凝ってしまう・・・

傘張という岩がせり出た所がある釣り場での

初めての釣果であった。

 

おお、これぞ正しい食い方、腹でも食う、口でも食う・・・

(ウソです・・・)

でもルアーとしてはホントに正しい掛かり方で

頭の方から食いに行って、前のハリを食らい

もがいているうちに後ろのハリが腹側にがっちり掛かり

理想的なフッキング状態といえる。

18センチのルアーに食いついた40センチの

食べごろカスミアジ。

 

美味しかったなあ、これも。料理はまた別の項に譲る。

 

このルアー、タックルハウス社のシンキングワークスというやつで

飛距離、泳ぎの性能は良いが強度が貧弱な本土仕様のルアーだ。

後日、あっさりリップが折れた。

二本目も力が掛かって根元が白化しており、危険だ。

しかしながら、逆風でも飛び、的確にポイントに迫ることのできるルアーで

今後大東での定番ルアーとなるべき存在である。

もちろん、何らかのチューニングなり強化策は必要だが。

 

南国でも相変わらずヘッポコな釣り人である僕にとって

険しく苦しいなか、救いであったことが一つある。

 

今年、二度ほど八丈を訪れたが、その時の磯歩きは大変であった。

もう、磯に出るまでの距離、高低差、磯に出てからの滑りやすさ

どれをとっても大東をしのいでいる。

大東より険しい釣り場はないと思ってきたが

大東の釣り場が身近で行きやすい磯と感じられていた。

 

気候が涼しいことも手伝って

とても磯へ行くのが心地よかったのが印象的である。

 

さて、釣果はこれっポッチしかなかった。

他にどのような大東の過ごし方が残されているのか?

次週をお楽しみに。

 

ではまた