晴天大陸、種子島

 


住みたい島を目指した旅である。

釣れる釣れない、これは大切なことであった。

だが、それ以上に「住みたい」と思うことも大切であった。

住みたい島はいつ訪れても心地よいものだし

いつ行っても発見がある。

 

出発はいかにもサラリーマン的三連休の初日、土曜日。

思いのほか、羽田は混んでいてまいったが

そこはそれ、こう見えて長男は羽田初心者でもなく

セキュリティゲートは空いている所をさがしてスッと入れた。

 

ともかくも

朝が5時半起き、出社日よりずっと早い出陣だったので

小腹がすいてきており、前回の対馬ゆきの際に食べて

驚くほどうまかった立ち食いへ行く事に。

 

何も羽田空港の中で、高価な500円もするような立ち食いそばを

食べることもあるまい、と思われる向きもあろうが

このブルースカイのそばは逸品である。

最初食べた時は、見た目に500円ははばかられたが

試してみるものである。

見た目には、どんぶりも発泡スチロールで、この上なく情けない。

もちろん、食べるサラリーマン風情も最悪で

お父さんの姿としても、かなり肩身の狭い、恥ずかしげな姿となる。

しかしながら、こういっちゃあなんだが

東横線、日吉駅前のそば専門店「む××」さんよりよっぽどうまい。

(立ち食いではなく正統的そば屋なんだが)

ここのは迷わず500円は出す価値ありであると信じて疑わない。

ただ、つゆはそれなりで、多少化学系の味である。

七味を少なめにふり、さっといただくと

実にアツアツ、さわやかである。

 

ただ、鹿児島に着いて、大変な失敗をしたことに気づいた。

 

YS-11という、国産名作旅客機があった。

だが、もはや老朽化が進み、安定性やパワーが危ぶまれ

欠航相次ぐ機体として、長男には記録されている。

信頼性は抜群だが、着陸できなかったり、引き返したりされたら

そりゃもうカナワンからである。

 

そこで、旅程を考える時、YSだけは外しておいたのだが

ワイエスさえ外せば、ジェットだ!と思っていたのは大いに外れた。

 

いざ、歩いて乗り込むというので

うきうき気分で搭乗階段を下りてみれば・・・

プロペラのSAAB機(サーブき)だったのである。

時刻表のSAってサーブだったのね・・・とっくの昔に後の祭りであった。

おおっ乗ってみればマイクロバス、ローザみたいだ。

スッチーはまるでバスガイドさんに見えなくもない。

 

ふ、不安だ・・・

 

晴れている時は良いのだ、揺れようが、うるさかろうが。

短い貴重なサラリーマンのお休みであるから

飛べない、下りられないでは困るのだ。

だが、冷静に考えれば、ワイエスよりも後に開発されている。

 

どうやら、聞いたところでは

揺れはするが、ワイエスよりも荒天には強いらしく

ゆくゆくはワイエスの後も引き継ぐらしい。

 

でも小さいのだ。

だから、当然、すんごく揺れて風情も満点なのだ。

その上、これまでになく翼の幅が極端に狭く竹とんぼみたいで

本当にこれで軽やかに飛べるんだろうか・・・とかなり心配した。

 

さて

天気は曇りがちだが、晴れといったところ。

雨男を通り越し台風男へと成長してしまった我が身からしてみれば

これとて快挙であるのだが。

 

空港は限りなく寂しくて、離島名利につきる風情がとてもいい。

南大東と同じくらいすごくいい。

もちろん、空港に行く道も細いし、国道から分岐する時も信号はない。

 

島は山がないとは思ったが、フラットではない。

丘が続く感じで、海よりずっと高い土地が不思議な低い高原のように続く。

そして海辺に出た。

大東では見られないビーチがマブシイっ!!!!!!

って岩かよ・・・砂地のそこここに岩場が点在している変わった地形だ。

 

だが、やがて今しも天候は曇りがち。

ちょっとおどろおどろしいが、ビーチはすばらしい。

これは別の時に撮っておいたビーチ。

シーズンには人出がすごいんだろうが

多分湘南ほど馬鹿げた混雑ではあるまい。

同じ島とは思えないほど違う色合いだ。

すっきり晴れた日には

ひとくち飲んでみたくなるような、きれいなエメラルドグリーン。

 

島は東シナ海側の西側と太平洋側の東側で表情が違う。

ビーチと呼べるのは、東シナ海側である。

東シナ海といえば、なんだか柔らかいが、日本海や玄海灘の続きだ。

だが、実のところ太平洋側が実に荒々しい。

だから、海が遠い高台に道があり、さとうきび畑が広がる。

このあたりは南大東と共通する風景だ。

なんだか懐かしいが、とっても秋の風が吹く不思議な風情だ。

 

ふと湾奥の集落を訪ねると、穏やかな川があり

マングローブが根付いていた。さすがは種子島、亜熱帯?

 

おおっガジュマルもあるぞ!と思ったら

そっくりさんの「榕」(あこう)というのがあるらしい。

葉がガジュマルよりでかいらしいというが、当然、見分けはつかぬ。

カンパチとヒレナガカンパチみたいなもんだ、そう解釈した。

(すむところが違うと、ちょっとだけ姿が違う種が居るもんだ)

でもこの風景にあるのがどっちかは調べなかった。 

本当に調べたくなったら、また来るだろう・・・そう思えたから。

 

できれば、大葉ガジュマルくらいにしておいてほしいものであった。

 

空を見ればトンビ・・・じゃないミサゴだ。

トンビと違って白いところが多いのだ。

トンビもそこそこ居て、本土となんら変わらない。

 

しかし、訪れている間、東の海はシケが続いた。

ヒラスズキを釣りたくなるのだが

大きな波が岩の上に乗りすぎであった。

実は波自体は高くないのだが

おそらく水深が浅く、沖からやってきた波が

ご当地ならではの浅瀬にぶち当たり

岸際で急に波が高くなってしまい

直前で屹立した波が岩場にどっと乗りやすいのだろう。

無理して釣りをしに行ったが、頭から重々しい滝のように波をかぶり

危うく走馬灯を見る思いをした。

 くわばら、くわばら。

 

これに懲りて、磯ではもう竿は出さないと決め

なおも海岸を回ってみると・・・

「ん?だれだ?こんな島に下品な高層リゾートホテルなんざ建てたのは!」

と思ってよくよく見ると、釣りしてるおっさんの向こうにあったのは

種子島宇宙センターであった。

反対側から見るとこんな感じ。

今週打ち上げがあるということで、警備が厳しいらしい。

長男としては、ビーチが続いていて魅力がないので立ち入らなかった。

いつか、釣り以外で訪れたときこそ

あらためて行ってみようと置いておくのもスタイルだ。

 

果てさて、今回はもう他に釣りしてないのか?と思われる向きもあろう。

実は、してますがな・・・

 

ふと立ち寄った港。

 

だけど、何をしてよいかよくわからない。

下は砂地、皆さんが釣っているのはメッキみたいだ。

(メッキ:ロウニンアジなど南方系ヒラアジの子供のこと、30センチ未満)

 

あれこれ考えながら、とりあえず仕掛けを沖へキャストした直後・・・

ズキッ!!!

肩に走る、脱臼のような痛み!

この間、友人とやった腕相撲の後遺症だった。

すさまじい痛みが走り、釣りどころではない。

うおおっ・・・

思わず周囲を気にせず、いや、そんな余裕はなく、うめいてしまう・・・

 

それでも数投し、竿を納めてすごすごと帰る姿に

周囲の釣り人が、ちょっとした異常にちらりと目を向けた。

 

あ〜あ、これで種子島の釣りも終わったな。

 

 

まあ、それでもよかったかもしれない。

種子島は、ビーチは美しいが、この季節これといって何もない。

鉄砲伝来の地であり、日本の宇宙最前線だが

たった一人の旅人には、それらまったく意味がない。

それでも居つづけしてしまったのは、民宿のおかげさまであった。

 

その念入りなモテナシの心を持った民宿の名は「珊瑚礁」。

種子島にしては、ちょっと南方過ぎ気味な印象で

ダイバーの巣窟的期待値に満ちた名だが、そうでもないようだ。

僕のようなサマヨイ人が行っても十分もてなしてくれる楽しい宿。

果たして

宿泊は如何に!?

それは、また来週。

 

帰りの道すがら、ふとみれば・・・

ん?種子島かいわいの雲はけっこう堅そうに見えるんだな・・・

種子島だからなぁサスガわい。

 

あれ?違う!あれは山だ!!あれは屋久島だ!!!

屋久島の山があれほどに高いとは思っていなかった。

以後、気をつけて屋久島を見ていたが、山頂を見ることはなく

いつも雲に覆われていた・・・

月に35日雨が降るというのはダテじゃないんだなぁ、としみじみ感じる。

 

しかし、なんといっても種子島は晴れでよかった。

次週、何も起こらなければ、民宿編へつづく。

 

ところで、腕相撲は悪影響であったが、まぁ右肩がダメなら

左腕の釣りを開拓するわい・・・とラテン系になっていた。

 

実のところ

その苦渋の境地に至らせてくれた友人に

すごく痛いから感謝こそしないが

この境地が微妙にうれしい長男であった。

 

何しろ、民宿珊瑚礁の主人殿が教えてくれた

人生の重みに満ちた「がけっぷち」という言葉が

やけに心にしみていた事もあったからだろう。

その意味も、また、民宿編にて。


ではまた