故郷、火星接近か?

 


小さかったころ

僕の父は夜空に輝く赤い星を微妙な面持ちで

シミジミと見上げていたことを思い出す。

 

先日、めったに風邪を引かないくせに、夏風邪を引いた。

ニュースによると、火星が大接近しているらしく

次のチャンスは人類の一世代の語れるスケールではない。

 

そして、なぜだか長男は耳が大きくて、動かせる。

 

ふと夜空を見上げた・・・あれは・・・!

 

火星だ!

 

長男もこうして夜空を見上げ、南大東ではUFOまで目撃し

神妙な心持で、どういうわけか生きてきた。

火星は別段大接近してきたとはいえ、大きく見えるほどではないが

なぜだかつい、会社帰りに探してしまうこのごろである。

 

ある遅めの会社帰りの空、月がまぶしかった。

このところ、荒天に忘れられない夏を一層印象付けるように

暑い夏が戻ってきた9月だが、夜など美しい月が輝く

見違えるような美しい空である。

もちろん、炎天下の空を見上げれば、格別の青空が爽やかだが

都会の人間にはわからないらしく

暑いのが、夏休みに暑くなかったのが恨めしい主張だけが

耳に久しいのである。

 

暑く恨めしい以上に、昼夜となく夏以上に理想的な夏なのだが

9月になると、数字の上で秋になってしまう悲しい人類のサガだろうか。

残暑ざんしょ、といってさっさと涼しくなって欲しいと願ってしまう。

 

珍しく、月のまばゆいその側(かたわ)らに

ひときわ明るい星がよりそっている。

あれは・・・そうか。

思い起こせば

夏休み、不思議なことに母ですら異常にこだわって

見たい見たいと言っていたほどの今年の火星が

月のそばにあるものだから、いつも以上に気になって

何度も空を見上げながら家路を歩んでいた。

 

家に帰りテレビをつけると

NHKのニュースで珍しい現象なのだと告げている。

 

このことがさらに後押しし

心の奥底より

撮影せよ!チャンスだ!という思いが突き上げてくる。

単に、しばらく使っていない超望遠セットが心を揺るがしたのだろうか。

手持ちで限界まで頑張れるはずの、手ぶれ補正レンズとセットの

900ミリ超望遠レンズが手の中に重々しく横たわっている。

 

だが、重さはさることながら、月が思いのほか明るいのは

関東の夏とは違う秋らしい空気が

空を漂っているのに他ならない現象だ。

 

火星、それは我が家の故郷?ではないはずだが(戸籍上は四国)

月と共に美しく輝く姿を、撮影せずにはいられない長男であった。

 

写しはしたが、釈然としない火星。(右下)

 

600万画素にものをいわせ、拡大してみると、丸いではないか!

丸いというのは、月以外を普通のカメラで撮影した場合

ちっとも丸く写らないのが星である。

通常はデジカメのノイズの中に埋もれた点(ドット)でしかない。

(というのも、きちんと天体望遠鏡を使わないからだが・・・・・・)

 

あれこれとソフトを駆使して加工して拡大してみると・・・

すんごいぞ!こりゃあ!という気持ちが

長男にひらめいていた。

見てもらえば分かるが、デジタル処理をすると

下部の白っぽく明るいポイントが見える。

多分、ノイズでなければ火星極地現象のドライアイスだ。

こんなのが、手持ちで撮影できるなんてスンゴイ幸運である。

 

デジバカ再生のチャンスとも言えるだろう。

なにせ、デジバカといっても

このところ単なる新製品めずらし買い的で

新らし物好き自慢でしかないからだ。

 

これはそうじゃないぞ。

 

言い知れぬ火星ソウルが長男のデジカメにも宿っているようだ。

火星が近づいて、我がルーツを知る思いである・・・???

 

ともあれ、小さな地球の天文において、ドラマティックな瞬間。

旅はできないが、地球の兄弟である赤い星に

かつての父親経由で、懐かしさを感じる珍妙な心持の長男であった。

 

うーむ、我が身の生まれ出たところとは

山口県のハマウチというところだと聞きおよんでいるが

実は・・・


ではまた