真昼のウミホタル

 


仮免だった、とある友人が免許を取得したので

せっかくだからと、セリカを運転させてしまおうと思った。

だが、誘ったはよいが、都会の運転もセリカの運転も

長男である僕自身がヘッポコで、むしろ自分のほうが

練習しなければならない状態である。

 

エンストは言うに及ばず、カーナビも使い慣れないし

空いている道を求めて、川崎の埋立地方面を目指したが

思ったようなイメージのガラアキ空間はなく

あれよあれよという間に、トンネルへ入ってしまった。

 

逃げ道なしである。

 

普通は、高速道路とか、有料道路は逃げ道があって

手前に何らかのサインがでているのだが、そこは別だった。

なすすべなく突入したトンネルとは、なんとアクアライン・・・

言わずと知れた東京湾横断道路である。

川崎から、千葉県へ一気にわたってしまうトンネルであった。

 

手回し良く若葉マークを用意して

潔くしている助手席の友人の手前、なんともカッコ悪い・・・

言い訳不能である。

 

初心者マークを今か今かと携える友人を乗せたまま

運転暦20年近い長男が、あろうことか迷い込んでしまったのだ。

だが、じたばたしたって始まらない。

道は一直線に千葉を目指して海底をひたはしっていた。

だから、セリカも長男も同乗してしまった友人も

アクアラインから逃れることはできないのだ。

 

幸い、

アクアラインは東京湾の只中にあるウミホタルサービスエリアで

折り返して帰ってこれる設計になっていることは知っている。

 

なすすべもなく辿り着いたウミホタル・・・

 

駐車した車の向こうには海が臨める心地よさ。

あっというまに心のわだかまりは爽快感へ。

海さえあれば、たとえ東京湾でも和んでしまう、不思議な長男である。

ウミホタルは頂上にレーダーまで備え、まるで船のようだ。

完全人工島であるから、周囲には消波ブロックが入って

絶好の釣り場であろう。

 

気に入ったのは、そこに入っている店舗が

案外、地域密着の食品を扱っていることであった。

東京タワーやディズニーランドのみえる場所にあって

東京を意識しない、川崎、木更津の食品が多いのだ。

アイデア商品としては「あさり饅」がおもしろい。

次に行くときには食べてみようかと、長男流の面白ポイント温存旅行を

実施してあるのだ。

いくつになっても美味しいものは一口で食べてはいけないのだ。

なんと言っても学生ドモには夏休み最後の週末であるのだが

意外と空いているのに驚かされる。

確かに、大都会のお膝元、それも単なるサービスエリアでは

夏休みの思い出も作れそうにないから、それほど混まないのも頷ける。

 

だが、サラリーマンの我々にしてみれば驚きのスポットだ。

海のど真ん中にあっという間に車でいけるし

東京とは違う海辺の食材に満ち満ちている。

週末の小さな旅には絶好のスポットといえるだろう。

なにしろ、思いつきだけで、休日の午後に出かけて

渋滞もなくいける場所なんて、そうはない。

 

だからといって長男が都会の生活に馴染んだ訳ではないのだが。

 

久々に都会でマッタリする事ができたのであった。

まあ、同乗していた友人の意外な?マッタリ感も手伝ってのことだ。

今日はなぜだかマイルドだ。

 

なぜ練習時間を削って、こんなところまで迷い込んだのだ!

遊んでいる暇はないぞ!おっとり刀で川崎へ帰り

練習!練習!練習だっ!と責められても不思議はない状況だが。

 

東京湾を渡る風は、決して大東島ほどスガスガシクはないが

思わぬ、心地よい昼下がりを過ごすことができてしまった。

 

だが、この安らぎの後、格闘が待っている。

セリカを無防備の状態で、若葉マークに貸し出すのだから

それなりの勇気と度胸と、人生のアキラメ感?(ワリキリ)が必要だ。

 

いろいろあったが、この記事を書いているということは無事である。

 

セリカもラッキーなことに無傷であった。

この半年間アマリ良い事はなかったが、幸運を貯金してきたに違いない。

恥もかいたし、冷や汗もかいたが

実に愉快な週末が過ごせたのであった。

 

6速ミッションと190馬力を味わってもらおうと企画したのだが

まだまだ練習が必要そうである・・・

自分の車の助手席に乗れるのは乙なものだが

交差点ではほとんど足を踏ん張って、心の床ブレーキを踏みまくってた。

 

今度は、長男自身エンストしないように

心持ち強めなアクセルの踏み込みをマスターしなきゃな・・・と

反省至極なのであった。

待ってろよ、木更津

寒くなるころスッカリ上達して、あさり饅をハフハフ食いに行くからな。


ではまた