伊豆大島は遠くなったけど、磯は楽しい


期末の赤字企業ゆえ、奇妙な忙しさがつづき

更新が遅れまして申し訳ありません。


 

めずらしく、この時期の大島の磯は寒かった。

 

伊豆大島へ行くには予約が必要になって

予約すると、二等客室はとれないので、特二等客室以上になる。

すると、キャンセル料が100%となり

予約しただけでキャンセルできない状況に陥るのだが

まあ長男は苦にしていられない。

ホームページを見てショックを受けるお客もいることだろう。

 

飛行機だって切符は払い戻せるのだが、どういうことか。

 

東海汽船の経営はどうかしているが、不況のあおりを受け

島嶼(とうしょ)への航路は、想像を絶する驚愕、狂騒状態なのだろう。

しまいには

キャンセル迷惑料として運賃200%を平気でせしめかねない状況だ。

 

ふたをあけてみると

ちょっと前まで、民宿の一泊二食5千数百円はどこへやら。

7千数百円へ一足飛びに飛躍していた。

おそらく、民宿がカルテルと言うか、皆で値上げしているようだ。

7千円が民宿レベルというのは、馬鹿げているというのが分からないらしい。

それほどに、伊豆諸島の産業は疲弊(ひへい)しているのだろう。

三宅島があの状態だから仕方ないが、旅行客を脅かす料金体系とは

いかがなものだろうか。

というより、脅迫に近い料金体系は悪循環以外、何者でもないだろう。

元気になって、正常な感覚を取り戻して欲しいものだ。

 

ましかし

ブルジョア?長男にとって、料金は問題ではない。

以前から、魚一匹釣っただけで、刺身にしてもらうと料金が先に提示される

心寒いお土地柄の伊豆諸島、小笠原諸島であるので、世知辛くなったからと

別段恐れるにたらないのである。

 

最近、何かをしようとすると、こういった理不尽というか

不条理に行き当たる。不況とは恐ろしいものだなあとツクヅク感じる。

 

以前なら、横浜から乗れたのだが、もう、横浜には寄航しなくなったため

東京まで行かなくてはならないが、それでも大島の自然は素晴らしい!

狙う人の居ない、大島のハマフエフキを狙って、美味しい料理を夢見て

大島へ向かったのであった。

 

ところが、ときおりしも最大の問題が

意外なことに料金問題となっていた。

もちろん、長男の豊富な預貯金がデジカメや釣具に消えたわけではない。

長男の財布に「2万円」しか入っていないことに気づいたのは

出かける2時間前、夜の帳が下りてからのことであった。

とりあえず、行きは大丈夫だ・・・。行ってしまえばなんとかなるさ。

窓口で片道切符をゲットして、久々の乗船名簿をシミジミと書きこむ。

明日は釣れるだろうか・・・今夜はゆっくり寝られるだろうか

それにしても、急に寒くなったなあ・・・などなど思いは巡る。

 

見まわせば

竹芝桟橋のロビーは釣り人が半分ぐらい居るので驚きだ。

定期客船が週末だけの運行になったので釣り人が

集中しているのだろうか???

なかには、ろうわの方々の磯釣りクラブがあって

手話でさかんに何かを話していた。

実に楽しそうである。

ルアーらしい釣り人もチラリほらりと見えるが

圧倒的に磯釣り、船釣り、石鯛釣りが多く、ルアーマンというのは

普通はヤワだと見られてもショーガナイなあ、と

これまたシミジミしてしまう。

自分の姿は恐らく、ルアー釣りには見えないだろう・・・

塗料のはがれた背負子(しょいこ)に

使い古しの発泡ムキダシのクーラーボックス

その上に色が褪せてきたリュックとライフジャケットが

縛り付けられている。

背負子せおってルアー釣りに行くのは

日本広しといえども両手の指で余るくらいしか

居ないのではないだろうか。

もうスッカリ大島の磯釣りオヤジになっている自分が

嬉しいやら悲しいやら・・・

 

はたして

幸い、船は5時過ぎに到着し、夜の明けないうちに路線バスに乗り込む。

前に乗った時は6時に着いていたため、夜が明けきってしまい

釣りも辛かったが、今回はラッキーだ。

三連休ともあって、想像以上に混み合ってきたが

足の速い長男は降りやすい前の席に着席済み。

もちろん、磯釣り客のために座面が外された最前列の席に

しっかりと背負子を乗せてある。慣れたもんだ。

 

最近、ちょこちょことバス停の名が変わるので

まだ、降りるバス停の名が同じかちょっと心配だ。

例えば、コワキエンが無くなったので、コワキエンマエから

ユウビンキョクマエになったりしている。

しっかりと風景を確かめて、タイミングを計らなければならない。

大島のバスはフリーバスでもあるので

たとえ行過ぎても下ろしてくれというだけでバスは停まる。

残念ながら朝っぱらの緊張は不発に終わり、バス停はそのままだ。

 

目標の磯のアカッパゲ(赤禿)までは、自然休養村入口から歩いて20分。

ここは、8年前、60センチのハマフエフキを釣ったポイントであり

昨年の一月に上司の残業を振り切ってヒラスズキを釣り上げた

由緒正しいポイントだ。

気象庁の予測した、朝方、北東の風が「やや強く」というのは正しく

朝方・・がいつまでか分からないが、10時頃までは平気で吹き荒れていた。

風があっても平気なヒラスズキ釣りならいざ知らず

この時期の釣りは繊細である。

ミノーという、魚に模した一般的な水中ルアーを使っても

魚が反応しないとき、ポッパーという、水面ルアーを使うからだ。

水面ルアーは、風があるとザワザワと水面が荒されて、キキメを失うのだ。

不思議な話だけれど、ある程度、海が豊かだと、水中より水面が魚を誘う。

「ちょぼっ、チャボッ」「私はまだ生きられる、けど、駄目かも・・・」のような

水面でもだえる魚の音というのは、下に居る大型の魚には

たえがたいオイシサを演出するわけである。

四時間目の体育で、運動場に流れ出す

たまらないカレーシチューの香りと

同じような効果・・・・といったイメージだろうか。

給食大食い王であった長男独自のタマラナイ現象だろうか?

 

以前、数百メートル沖のナブラ(魚の興奮したザワつき)を

目の前まで寄せてくるのに、ポッパーを使ったことがあった。

 

沖合いのザワザワした魚の興奮、それを一匹だけど手前に演出した。

逆にきびきびと水面を泳がせることで「私は今、小魚食べてます!」のような

状況を作り出すわけである。

そうすると、魚たちは、そっちでも同じ状況があるのだと思って接岸するのだ。

(同じ状況:ハマチなどが、小魚を水面に追い詰め、興奮して摂餌する状況)

ポッパーとは海が静かなとき、餌を追う肉食魚の狂乱状態をも演出できる。

つまり、美味しそうでタマラナイ演出と

たまらなさがこらえられず食いまくっている魚の

両方を、テクニックによってお誘いできるということだ。

 

そんなわけで、吹き荒れる北東風の中、ポッパーを止めなかった。

 

疲れたら時折ミノーを投げる。

ポッパーばかり投げていると、ナゼか糸が絡まってトラブルが発生するので

時折、糸をしっかり巻きなおすのも兼ね、水中を泳ぐまっとうなルアーを使うのだ。

魚を飽きさせない効果もある。

 

でも、釣れない時こそ、水面で勝負する・・・

昔の長男であれば、非常識ハナハダシイ行為だが、自然が長男を変えていた。

 

オオ魚の気配はないがコ魚の気配はスゴイ。

足元そこいらじゅう、3センチから5センチぐらいの稚魚に満ち満ちている。

ということは、これを狙っている中型魚も居てよろしい状況である。

 

しかし自然とはなんとも最適なシステムになっていて

長男が思うほど、中型魚は居らず、肉食魚はおおむね時分の1/3とか1/2の

対象魚を食べるというルアーの定理と同じように、20センチまでの

小型魚しか居なかったみたいであった。

20センチくらいのおそらくシイラの子供だと思うが

ルアーが通過すると、ぴよ〜んとか、パヨ〜ンとか空転していた。

肉食魚が噛みついたのに食えない相手が出現したときに

パニックになるとこうなるのだ。

大東でも、ダツが硬い手製の木製ルアーに食いついた時

歯が立たず平然とルアーが泳ぎ去った形になった時

ダツは沖合いでクルンと宙返りする。

あとは、ヒラアジに追われてパニックの時もやるようだ。

 

それから、縄張り荒らしと勘違いして、ベラらしい魚がルアーを追尾してきて

ルアーを水面から引き上げると尚もシツコク追尾、2匹同時にジャーンプっ!!!

という珍場面もあった。一匹ならまだしも二匹同時・・・もう二度と見られまい・・・。

おそらく、縄張り争いが3ツドモエになったことで白熱したのだろう。

実はその前段階から、かなりチョロチョロとうるさく付きまとってはいたものの

まさか飛ぶとは・・・。

ベラの曲芸って可能かもしれんな・・・と妙な自信すら湧いてくるほど

見事にそろった鮮やかなジャンプだった。

 

ただ一度

 

モワっと50センチくらいの魚がルアーを追って深い場所から出てきた!

黄色い姿、あれはおそらく、狙ったハマフエフキだろう。

 

その他、例年になく巨大なダツが沖縄風に攻撃してくるのには

ちょっと閉口した。反応なしよりはマシだが

長男ですらも高価な4800円ポッパーを使っているので

絶対に食って欲しくない、ヤナヤツである。

 

結局、ヤナヤツを含めて

一度も魚は食いつかないまま、さっぱりとした釣行を終えた。

 

ふと気付くと、何やらチョロQのようにデフォルメした現実の船が行き交う。

「こ、これが伊豆諸島最新のジェットフォイル・・・」

伊豆諸島の船と言うのは油断ならないオモシロさがある。

このタイプが4隻くらいあるらしい。

この日は2種類、緑色のやつも見た。

 

昼頃、出帆港となる元町へ歩いて行ってみると

行きつけの一峰さんが営業を止めていた。

向かって左側のならびにある。

おそらく、客の多い夏だけにしたのだろう、寂しいものである。

ココで食べる豚ショウガ定食は愛すべきメニューであった。

オカワリも無料というのが学生街みたいだった。

それに、岡田港にある一峰は、あの逸品、イカそうめん丼を出す店であり

冬場、出帆港が岡田港のときには是非開店していて欲しいものである。

今回は通りの右手前

向かいのお土産屋の二階のお店で

見なれない「ムロアジのタタキ揚げ」である。

タタキアゲ?

なんだかレンジャー部隊のタタキアゲ軍曹のようなイメージがよぎる。

このタタキアゲはムロアジの「さつま揚げ」だという。

確かに、ちっともタタキっぽくはない。

完全ミンチの揚げもので、更に言えば、ちっともアツアツではない

残念無念すぎる料理であった。

ムロアジの身のイメージがあるようなタタイタ感じ(あらびき風)もなく

冷めきった味も不況のせいだろうか。

これがオススメとは・・・

更に言えばビールにも大好きなアシタバのお浸しが出るのだが

定食にもついているということで省略されてしまった。

以前は出してくれたものだった。

 

ことほとさように

ズイブン島全体が不況の影響を受けているようで

港にある待合の前にある、アンコさんの露天も、一軒しかやってなかった。

例年なら、連休だから、何軒もサザエを焼いていて

磯と醤油の香りが悩ましいはずであった。

 

時は止まってはくれない

今がどういうときかは、後にならなきゃ分からない。

最悪のときは、まだこの先にありそうだが、釣り人が減ってくれれば

釣り場はとっても魚が豊かになる。

そうはいかないだろうなあ・・・と思いつつ

もわっと出たヤツを、来週なら大潮で

大胆な行動に転じさせられるかもしれないと

どうしても、ハマフエフキを食べたい秋モードの長男であった。

(海は一月遅れだから、9月は真夏だけど・・・)

ジェットフォイルでないアルバトロスは

なぜか尚も元気に健在であった・・・

おそるべしドアホウドリである。

向こうに停泊しているのが昨夜乗ってきて

神津島まで行って、また乗ってかえる

かめりあ丸である。

以前のさるびあ丸より小さい船だ。

じゃあさるびあは丸は?と思ったら

八丈航路に変わっていた。

じゃあ、すとれちあ丸は??

すとれちあは見当たらなかった。

ひょっとすると、三宅島復興専用に就航しているのかもしれない。

 

まってろよ、フエフキ!我が家の取っておきの大きなまな板が

おまえに会いたがっている限り、あきらめんからな。

そうココロに誓って、かめりあ丸で帰路に就く長男であった。

(そのまな板は買ってちっとも使ったことの無い新品同様なのだ・・・)


ではまた