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ある夜、通勤路のコトブキヤ酒店でビールを買い

家の近くまでやってきた。

 

すると・・・

 

もこもこ黙々と道を横切る、怪しげな物体を発見。

言うなれば、未確認移動物体であるが

ゴキブリより遅く、カブトムシよりも小さく

大きな往来をまっしぐら!(人間にすれば小道だが)

怪しむ前に手にとってしまう長男・・・

そう、この明晰?な頭脳より早く、手が反応したヤツとは?

 

セミの幼虫さんであった。

幼虫といっても、すぐに羽化するのだから、歩くサナギというのが

正解であろう。

 

ここ、日吉本町でも、最近は建てかえが多くて

アチコチ、空き地になって建てかえを待っている。

しかし、セミさんは待てない。

7年前は木があったのだ・・・ん?ここ数ヶ月の飯はどうしたの?

細かいことは分からないが、無事空き地の草につかまったままの

空蝉(ぬけがら)をよくみかける。

うちの庭にも、隣の家から越境してやってきたのか?

出所を間違えたらしいウッカリ野郎が庭先の低い植物の茎で

ちゃっかりと羽化しているようだ。空蝉が見える。

 

さあ、我家にセミさんがやってきた。

家の前まで来ても異常に急いでいる。

きっとミンミンゼミさんだろう・・・

幼少を過ごした西日本にはミンミンがごく少ない。

そのため、テレビでしか聞けないミンミンゼミの声は長男の憧れなのだ。

ぜひ我が家にやってきて欲しいセミ族ナンバーワンであった。

一方、関東では

朝方クマゼミのシャーシャーシャーという景気の良い声が

全く聞けないのが寂しい気もするのである。

不思議と伊豆半島あたりで

それより東にはキッパリと居なくなるのだ。

何はともあれ

暑いからエアコンを入れよう。

多少温度の低めな土地に住むミンミンなら大丈夫だろう・・・

ということで涼風が部屋に満ちる。

急いでいたセミさんは、カーテンにとまらせると

すぐにポジションを決めて足を張った。

前足で体を支え、中足を広げて横揺れに磐石となり

後足はほとんど添え物的である。

シャワーを浴びて出てくると、さっそく始めていたのには驚いた。

ちょっぴり冷凍庫に入れておいた、

キンと冷えてうまいビールをプシッと開けて

観察開始だ。

明日も仕事があるのだが、セミさんの一生に一度のイベントだ。

そんな細かいことを言ってられない。

ビールを飲み終えたら、泡盛の水割りで対応しながら続行だ。

おおっ教科書でみたり、図鑑に載っていたのと同じだ!

よしよし、体が緑だぞ、ミンミンに違いない。

ん、えびぞったまま、動かない、10分以上経っても

パソコンのフリーズのようにフリーズしたままだ。

こっこれはっ!!!

エアコンが寒いんじゃないの???

どうも、急激な温度変化で、勢い、殻から出たものの

腹筋に力が入らず、起きられないらしい。

トンボの羽化をキッチリと目撃している長男だから

足が固まらないから待っているのだ・・・などという誤解は無い。

この体制では何もできない、究極的な油断した姿だ。

だから本来ならすぐに殻につかまって腹を抜くはずだ。

いかん!こりゃエアコンオフだっ!

そうだ、じゃあ玄関も空けていつものように蚊取り線香を・・・

な、なにっ!そうか、駄目ジャン、これを焚いたらセミが・・・

玄関のドアをシズシズと閉め、遅いくる暑さに

扇風機のみで対抗することになった。

微妙に貧乏くじな気分が漂ってくるのが不思議だ。

 

・・・

 

うーむ

 

や、やるか

 

・・・

 

つん、つーんっと・・・

(そーっと背中を押す・・・)

 

殻につかまると

生き返ったように羽に体液を流し

みるみる羽を伸ばし始める。

セミの羽化を介助した人類は、長男が有史以来初めてかもしれない。

つかまるとすぐにスルッと腹を抜くので油断大敵

すかさず撮影に備える。

案の定、すぐに腹を抜いて、実に見る見る羽を伸ばす。

左右不均一なのが、ちょっと不安だ。

おーっ、左右は揃ったぞ!

しかし、ミンミンにしては、体が茶色いなあ、羽はこれから

透明になるんだろうな・・・きっと・・・

羽が固まるとピチッと体に付けて、お馴染みのスタイルになる。

 

うーん、ちっとも羽が透明にならず、なにやらパターンが・・・

 

あ、ありゃっ!

お、おまえは脂性・・・じゃなくてアブラゼミじゃないかっ!

うそつきっ!なんだよっ早く言えよっ!!!と思ったが後の祭り。

まあしかし

無事に羽化してくれてよかった、良かった

ころあいを見て、不安定な殻の上から、カーテンの上に移動する。

ここまで来れば、大丈夫だろうと

一応、セミの寒さ対策として

カーテンの向こうの窓は開けっ放しにしつつエアコンを入れて就寝。

朝になれば鳴くかな?と思ったが

どうも鳴くには膨大なエネルギーを必要とするらしく

また練習も必要みたいで、鳴くことはなかった。

明るくなった朝4時ごろ目が覚めたので見ると

固まってる!

まずい、エアコンがまずかったか!?と思ったが、ツンツンすると

面倒くさげに部屋のどこかへ飛んでいった。

相当ツンツンしないと反応しない。

人類初の羽化支援活動が、セミのDNAに人間の

ツンツン系の仕業は大して危険はなかとですよ・・・・

というデータを埋め込んだためか?

 

眠いので気にせず寝ちまったのだが

出勤前ともなると、ナカナカ見つからず往生した。

あちこち探した挙句

やっぱりここしかあるまいと

窓際を良く見るとサッシのフレームの下のほうでじっとしていた。

明るいく暑い世界を目指そうとするDNAが生きている。

捕まえると、わずかに小さな声でグワワッと鳴いて飛んでいった。

 

さわやかな気分が夏の空の青さをいっそう爽やかにしてくれた。

 

カーテンには空蝉となったヤツが輝いていた。

「元気でな、俺より早く結婚しろよ、

 なんたっておまえの命は後二週間だからな・・・」

 

爽やかなのとは別に、探索に手間取ったぶん

会社に遅刻しちまった・・・やれやれ

俺にも、こんな人生の晴れ舞台来ないかなあ・・・

 

会社にいきがてら、見上げたら、桜の木には空蝉の集団が・・・

ユックリ生きることがいいのか、後二週間を生きるために

すげー熱意で生き抜くのが嬉しいのか、微妙に悩む長男であった。


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