秘密にしていたが、実は鳥羽水族館は楽しい。その周辺は怪しい。


これまで秘密にしてきたが、実は長男である僕は映画より水族館が好きである。

正月休みのチャンスを活かして、トバスイこと鳥羽水族館に行ってきたときのことだ。

 

伊勢の玄関口といえば伊勢市駅よりは宇治山田なのだが

実家から歩いて行けるので正しい順路だろうと思ってココから出発である。

実は鳥羽というのは伊勢からすぐ近くで、近鉄で13分程度しか乗車時間がないほど

旅情と呼ぶにはまったく物足りない距離にある。

旅情をかみしめつつ、鳥羽水族館を思い描いていた長男としてはかなりショックだ。

実家から宇治山田駅に行くのには20分近く歩くのだが、歩く方がずっと長いのだ。

すぐ到着してしまう鳥羽だが、鳥羽まで行けば周囲は磯が多くなり

イセエビやミキモト真珠といったイメージの強い環境がようやくそろう。

実は伊勢と言うのは昔の国(県)の名前であり、現在の伊勢市の領域ではない。

その昔、伊勢は伊勢の国の首都であった。

だから、伊勢とはずっと南までのことだったので、磯の香ただよう国だったのだが

今の伊勢市といえば、遠浅の海岸線しかないお土地ガラで

セイゼイ大アサリとか、海苔程度しかないのが真実である。

 

それはそれとして、鳥羽には二見浦をあっという間に通りすぎてスグである。

夫婦岩をすぐに通り過ごしてしまう残念さ、旅情のなさ、伊勢市民は損だなあ。

鳥羽水族館は、実は鳥羽駅よりも近鉄の中之郷駅の正面だが

あまりのマイナーな駅なので地元でも知られないほどの駅であった。

どうしても鳥羽駅で降りてしまう。

鳥羽駅からは10分位あるくと、東洋一の巨大水族館が見えてくる。

鳥羽水族館は9時から開店?しており、早起きの味方であるが

その開館時間には正月明けのユルい長男では太刀打ちできず、遅刻してしまった。

 

遅刻しつつ途上の海岸に見たもの、これこそが怪しむべき船影であったのだ。

かの伊豆諸島〜東京間の高速船アルバトロスには遠く及ばないが結構恥ずかしい。

かなり歌舞いている。それにキッチリと意味不明だし中華風なのはナゼだ。

 

しかし、驚愕のあまり、鳥羽水族館のレポートを忘れさせるほどの船影が

虎視眈々(こしたんたん)と長男を待ち構えていたのである。

その人知を超えた意匠(デザイン)、意味不明な堂々とした風情。

そう、鳥羽周辺を遊覧する、その名も「竜宮城」だ。

見れば直球なネーミングの船舶であるが

不思議かつ巧妙に恥ずかしさが演出され尽くしているのが分かる。

鯛やヒラメが足元にひれ伏し、その上、龍のようなものがシンガリをつとめるものの

手足がないので、これは龍風の装飾アナゴとも思える・・・。

究めつけの浦島&いじめられっこ亀さんだ。

鯛やヒラメは雄雄しく船上に屹立するオトヒメと同様天然色だが

肝心の悲劇の主人公たる浦島に至っては龍のごときアナゴと同じ、船の装飾品扱いで

表情のない金で塗りこめられてい、ウミガメまで付き合わされている。

漁民の腰ミノ姿には黄金が良く似合うからか?

金を払って、美しい伊勢志摩の海景を見る旅の人々には良いのだろうが

地元の人間にしてみれば、なぜにあれほどの恥ずべき?珍妙な船影を毎日終日

さらさねばならないのかと痛ましい・・・。

なぜなら、伊勢志摩にはウラシマ伝説は必要ないのだった・・・。

イセエビを味わうにも、真珠を見てウットリするにも、伊勢うどんを味わうにも

全く、完璧に、断じて、チョーゼンゼン関係ないのである。

どうして、浦島が金になってしまったのか、どうして海底の竜宮のあるじ、オトヒメが

雄雄しく冬の季節風を肩で切って進まねばならないのか、不明であった。

だが、何の衝動にかられたのか、コダワリに襲われたのか

見事、念入りに恥ずかしい造りになっており、おそらく毎日就航中である。

ちょっぴり国際秘宝館?的造形であるなあと感じる、秘宝館未体験の長男であった。

(秘宝館に関して熱海と伊勢の存在を確認済みだが、どちらも未訪が残念?だ)

こうして特集するのだから、見た目のエグ味以上の何モノかが

長男ソウル(魂)に波紋を起こしているに違いない。

まったく関係ないようだが

その桟橋から50mくらいには、カッコイイ三重県警の「あらしま」が静かにたたずんでいた。

平和だと出番もあらしませんなあ・・・。

 

日本人が船に感じるところは特別であるのかもしれない。

四方を海に囲まれ、謎や夢がたくさん詰まった海の果て・・・

きっと何か大きな思い、憧れが、海の果てにこめられているのだろう。

 

帰りはせっかくなので、近鉄ではなく、ディーゼルのJRに乗ってみたらビックリ!!!

運賃は格段に安く、ドアは自分で開けるのだが、車両の外に押しボタンがある!

雨の日も風の日も台風の日もこれを押さなければドアは開かない。

普通だと、ただの引き戸風だった気がしていたが、機械式の開閉扉なのだ。

「すげー」と感心していたら、運転手さんが案内してくれたので押しそびれた。

不況なわりに運賃格安・・・でも貸切状態・・・不思議だ。

運賃箱やら、その上の運賃表示板があるのが普通の電車とは違い、バス風だ。

車窓からの風景は、近鉄の電車からでは見えない、美しい海辺の景色が広がっている。

帰りの車窓はナゼか何もないハズなのに物悲しいものであった・・・。


あ、そうそう

せっかく海辺の旅情をかきたてる記事とは別に

すっかり忘れていたが、鳥羽水族館スクープといえば

バイカルアザラシのクシャミだろう。

(クリックすると1.1MBの激ムービー)

バイカルアザラシは地球唯一の淡水アザラシで、ロシアのバイカル湖にすむ

我々よりサブイ地域のアザラシだが

どういうわけか温暖地、鳥羽の風邪はダメみたいなのだ。

「ハッショイ!ちしょう゛ーぃっ」てな感じでないでもない。

クシャミと言うのは、チクショウ扱いであるのは万国共通っぽいことは

想像に難しいことではない。

トバスイは、とても長男誘惑ポイントなのだが

世の中の女性にはわかってもらえそうにないなあ、と

世間のフトコロの狭さを嘆きつつ、まあなんとかなるじゃろう・・・と

水族館&水族好きのカミサンを捜索する独身ピカピカの長男であった。


ともあれ、何かと心掛かりの多いこのごろ

何もかも忘れてしまいたい向きには、水族館!

我々地上生物の故郷(ふるさと)、そして胎盤にくっ付いていた頃の思い出!

水の中の様子を見れば、何かを思い出し、何かを忘れさせてくれる。

時にはイルカとふれあい、アザラシのくしゃみと出逢い、オウムガイの静けさと向き合う。

不思議な懐かしさが心を包むとき、長男もあなたも温かな世界を垣間見る・・・。

理屈抜きに落ちつく世界、それが水族館・・・。

映画でニンゲンの描く虚構を楽しむのも良し、生命の根源の温かさを

どこか水族館で、青い水の中に感じるも良し・・・。


ではまた