伊豆大島に羽ばたかざる翼を見た!


久々の大島、一月以来、ずいぶん来れなかったものである。

朝日が、明日の天候不良を告げている。

トンビなど見るのも久しぶりである。

 

アルバトロス、日本語ではアホウドリ。

限りなくユルんだ名前だ。

長い翼は、かもめに似た姿とは裏腹に広げると荒鷲並みの2メートル

荒鷲並みに羽ばたかずに飛び、遥かに旅できる。

ワタリアホウドリ、アホウドリ、コアホウドリ、クロアシアホウドリ

どれも人間を知らない、大自然まっただなかに住む開放的な鳥たちである。

 

去る休日、天気予報では2m→1.5mだったはずなのに

低気圧の接近が早まったか、異様に高いウネリが磯を釣り人を洗っていた。

見た目にはウララかな秋磯である。

その朝、今年2度目に訪れた大島は赤岩は穏やかなはずだった・・・。

しかし、口数が多くて声の大きい、いわゆるサラリーマン道具建て立派系メジナ師が

磯を埋め尽くそうとしていたのだった。

 

バスは意図せず貸切。

バスを降りるとき、その窓から運転手さんと磯を見たときはまだ

怪しいメジナ師は磯に展開していなかった。

が、いざ磯に行ってみると、レンタカーの軽が四台も。

 

口数が多く、やること為すことマニュアル通り、しかもアラユル餌を配合し

集魚剤もしっかり利用し、磯と言わず海といわず撒き餌をまきちらすその姿。

まあサラリーマンらしく、腰はいたって低く、気の良い連中ではあったが

これが問題だった。

思わぬ怒涛をあびる表の磯で、メジナ師のひとりがカンパチを目撃・・・

中間達が僕を見てルアーで釣れと言う・・・、でも、サラシが有るとカンパチは釣れない・・・

でもでも、人情としては、断れない・・・長男だし・・・

同じアジ科でも、死ぬまで磯際で生きていけるカスミアジと違い

深い場所を普段の住み家とするカンパチは、深場での目利きが命のためか

意外に目の効かない時は警戒してルアーには噛み付かないのだった。

でも、ひとしきり波をかぶる表磯で釣りをすると、やっぱり・・・元居た場所は

既に声のでかいメジナ師のうちの一人のものになっていた。

 

けれども、ウネリの勢いは衰えることなく、本来なら脇磯は穏やかなはずが

まわりこんで水柱が立っている!ザマーミロ状態である。

ひとしきり、無理矢理に表磯で粘ってみたが、沖といわず際といわず

釣れないものは釣れないのだった。

早々に磯を去ることにした。

メジナ師らは、ウスバハギとソーダガツオをイヤイヤ楽しんでいるようで

ウスバハギよりずっと美味しくないメジナが来ないと嘆いているようだった。

人間とは不可解な生き物である。

 

さて、珍妙なメジナ師と荒れはじめた一級磯を後にバス停へ。

すっきりと晴れた秋空に、ススキが揺れていた。

足元には小さいけれど力強く実りの秋も揺れていた。

 

はてさて久々の元町港。

ひとしきり

いつぞや湘南で食べたのよりズイブン安い、しかも冷凍のマグロなどという

つきなみな付け合わせではなく、しっとりとしたアシタバのおひたしが付いた

サザエ丼がうまい。アシタバはそのままおひたしにするとバサつくのだが

ここのはずいぶんジューシーで見事であった。

この見事さは、観光にうかれた普通の主婦では気付くまいが、おそらく長めに茹で

半分煮びたしにしているのではなかろうか。

それにしても、青々としながらここまでジューシーに仕上げるとは

さすがは御当地ならでわである。

ちなみに、トコブシ丼を頼んだのだが、この時期は禁猟だそうである。

知らなかった・・・。

そうそう、本命のサザエ丼は、サザエの歯ごたえも程よく

ミリンが煮きられていなくて苦いなどという初歩的な手抜き技なし現象など全くなく

ソツなく実に当たり前に美味しい仕上がりで、実は先に頼んだビールに

もう一つ全く同じアテのおひたしが付いていたのだが

このおひたしも美味しさのあまりたいらげ

幸せなどんぶりに明るいうちからグラスを傾けるのも悪くないお昼時であった。

 

ふと見ると、見なれない珍妙な船が港に着いている。

ピンク色がヒトキワまぶしい船体に良く見ると目が光っており

とても「お父さんはこの船の船長をやってるんだよ」と子供に言えないデザインの

あやしすぎる物体が秋晴れの海に揺れていた。

進水は1993(平成5)年3月、総トン数296トン、旅客定員300人、航海速力36・8ノット

(8年も何してたんだ???)

今年四月に東京(竹芝)〜大島航路に就航した

これぞ、その名もアルバトロスであった。

軽合金製で東京と大島を2時間20分で結ぶ高速艇なのだ。

いつもの連絡船なら四時間半くらいかかるところを半分近くで快走する。

 

何年か前、波照間島に行くのに高速艇を利用したが、あれの比ではない。

沖縄は比較的リーフが波を抑えてくれるし、船も小さいから水の抵抗も少な目。

伊豆諸島はご存知の方もあろうが、他の海より波浪の警報注意報が出にくい。

波浪が2.5mでようやく注意報だ。

その海を常に高速で行き来するために就航するというのは

万年渋滞の首都圏にあって

30キロ以内なら必ず一時間で到着しますというタクシーのようなもので

すこぶる便利で高性能な快速船なのだが、その姿はとっても親しみやすくユルい。

通常、乗る人からは見えない位置に目と鼻の穴まで描いてある丁寧さである。

ピンクの羽根、バカでかいクチバシ、どうみてもドアホウドリと言っても過言ではない。

四方を海に囲まれた日本ならでわの波消し技術と

双胴船技術(船体が二つに分かれた形状)の結晶ともいえる

テクノロジーの結集された頼もしい連絡船なのだが、料金が連絡船の1.5倍もするわりに

その姿があまりにもユルすぎて、ボってんじゃないの?と思わせる全く損な存在だ。

いろいろ手を尽くして、波を描いたり、伊豆諸島近海に多いトビ(とびうお)を

仲間にして描かれているものの、これが一段とインチキっぽさを演出してしまっている。

念入りに、かなり念入りに備品にもその名「アルバトロス」を冠するが

この救命イカダや浮き輪で救出された日には

「おおっ!あなたはあのアホウドリに乗船されていたのですね!!!」

と叫ばれて神以上に優しい、正真正銘救いの手を差し伸べる救助員に救われるわけだが

不思議となんだか、その船に乗った自分の判断がユルすぎたような気にすらさせる

実にユルユル感あふれる高性能快速連絡船であった。

見れば決してユルくはない先端技術のウォータージェットの高速艇ならでわの船尾である。

 

ともあれ男の子(昔はね)としては、憧れの高速船の船長さんに会ってみたいもので

いつの日か、東海汽船の人に頼んで、一度記念撮影などさせてもらうとよう。

早い乗り物を操る・・・これこそ、ジェット戦闘機のパイロットに勝るとも劣らない

男のロマンの体現者なのだから。

 

空には、惜しまれつつ退役した国産旅客機のワイエス11にかわって

不思議と南国で見たような懐かしい飛行機(デハビランド)が、アンコつばきを付けて飛んでいた。


ではまた