窮まりながら究まってきた 島の日常ルアー釣り

総集編 2017

 


 

徳之島で大物といえば、カマジ(ロウニンアジ)である。 ほかバラクーダとかイソンボ。

けれども、中間がなく、ブッコミでたまにチヌが釣れる程度。 しかも夜釣り。

昼は10センチ前後の魚を、オキアミのエサ撒きボランティアで釣るのが定番であるが、

それでもクーラーいっぱいには程遠い。 10センチなくても、持って帰って食べるのだ。

シマンチュの釣りセンスが悪いぶんを差し引いても、あまりに釣れない海なのだ。

他方で、ミサゴが良形のチヌ(ミナミクロダイ)を、浅場で狩る土地柄だったのに驚いた。

重すぎて、飛べなくて、結局はカラスたちに奪われたのだが・・・(涙)

そもそも、チヌが数十センチの広大なイノーにいるんだなぁと感心した。

 

残念ながら、徳之島に引っ越して、あまり釣り気にならない日々が続いた。

都会でカリカリ生活していたころの、ストレスがなくなったからだろう。

町内には荒磯が見つからず、ポイントがが遠すぎた・・・というのもある。

 

そして、マトモに釣るのには、およそ4年かかってしまった・・・

ミナミクロダイは、内地のクロダイとは姿も味も別物であった。 しかもサイトフィッシング。

丸々しすぎて、フォルムが変わってしまったメスで、2キロ近い良形。 今もこれが最大だ。

ズルびきコーンはハードルアーなのか、ソフトルアーなのか微妙な位置にあるルアーだ。

 

伊豆大島や南大東の釣りと同じく、ゼロスタートで釣り方を考えた結果だから、満足はできる。

ただし、まわりが人工物ばかりだし、魚も見えているので、あんまり夢のある釣りではない。

 

それから数か月後、季節は夏になり、地元の河口でちょい本気を出したら、アオマツが釣れた。

マジメに早起きし、日の出のタイミング、仕掛けは気の迷いによるアキアジ仕掛けであった。

ただ・・・潮位の条件が揃いにくいこと、アオマツとカマジ、イソンボくらいしか来ないので、

あれから河口でヤル気がサッパリである。 つまり、さほど美味しい魚がいないからだ。

 

知人の釣り好きが、銀色のスプーンがいい・・・というので、地元の釣り具店でもとめて浜へ。

フロントフックを装備したら、メッキが爆釣である。

釣果としてはみみっちい部類だが、島は釣れないから、これでもシッカリしたサイズにあたる。

シマンチュなら南蛮漬けにして食え・・・とか謂うのだが、そんなだから一生ズングリなのだ。(笑)

しかも自分で調理せず、母ちゃん代わりの妻に、全てやってもらうのだから、世話はない。

 

さておき

釣りの方向性を変える魚と出逢うことになったのは、次の日である。

調子にのってまた浜へ行ったら、日没に中型魚の群れにスプーンを瞬殺された。

通常のドラグ設定だったから、ダッシュにドラグが対応するまえに、あっさり切られた。

釣具店の在庫はなくなっていて、スプーンはもう使えない。

注文しても入荷はいつになるかわからないのが、離島の辛いところ。

 

苦し紛れに、ふと思いついて調べたところ・・・奄美大島ではマゴチがいるらしく

それらを狙いに、あり合わせのソフトルアー、グラスミノーLを携え、ドン深の浜へ。

 

真昼でピーカン・・・マゴチの気配はなく、昼のサイレンが鳴ったあと、掛かった。

波打ち際で掛かり、ビュンビュン引く。

ドラグがスピーディーにジージー出て、久々に興奮した。

ツバメコノシロのキロクラスが釣れたことによって、浜の見方が変わった。

凪ぎ、昼、ピーカン、砂浜、波打ち際、この条件下でも、充分な形の魚が釣れるのだ。

 

スプーンを奪われた際、あまりに速いダッシュで切られたので、ドラグをユルユルにしてあり、

鋭いダッシュで自動的にフッキングし、細仕掛けへの負荷が小さくなった。

それまでは、ギリギリのドラグ設定で手早く水揚げすることばかりを念頭に置いていたが、

細い仕掛けで食わせ、いなして捕るスタイルへ、アッサリ方向転換してしまったのだ。

 

そしていよいよ、アオチビキを釣った地元の河口で、アレを目撃する。

一生に一度と謂われ、見れば幸せが訪れるというグリーンフラッシュだ。

穏やかな気象だったため、日没のだいぶ前からグリーンの縁どりといった珍しい現象に。

結局フラッシュせぬまま、地味にじんわり沈んでいった。

 

霊験あらたかな現象がもたらす幸せ効果により、想定外のサイズがヒットしてしまう。

アタリはココンと小さいが、根掛かりのような手ごたえのあと、矢庭に走り出す。

浜を歩き回りながらの長いやりとりは、生まれて初めてだった。

オニヒラアジ3.4キロ、まさかの徳之島での最大記録である。

偶然、ユルユル設定を覚えたことが奏功したのは間違いない。

更に、宵には企画課と総務課の合同バーベキューがあり、食材が間に合ったのであった。

職員のみならず、町長、副町長に課長らも食したのだが・・・

腕でなくマグレと思われていて・・・未だに釣り師とは認識されぬままである。

 

グリーンフラッシュは、実に庶民的な幸せをもたらすらしく、人生の劇的変化には遠かった。

幸せをもたらすというより、自らが幸運をつかむキッカケを、ターボブーストする役割のようだ。

たぶん2キロくらいが掛かる予定だったのが、いささかヒラアジの運命が変わった程度だ。

ターボ効果は、一カ月間限定らしいこともわかった。(笑)

きちんとフラッシュしていれば、もっと濃厚で一瞬のロケットブーストだったのかもしれない。

7キロくらいの、もっと美味い魚だったかと思うと、心なしか悔しさを覚える。

 

ま゛しかし、新聞の一面に掲載され、結構アレで名が知られることになった。

 

そんなこんなで、貧民生活と偶然の釣果が相まって、ソフトルアーにシフトしていった。

チヌも、ズルびきコーンやスプーンよりも、ジグヘッドリグの方が反応が好いようなのだ。

 

酔っぱらってバランスを崩してもたれた壁には、愛用のトラウトロッドももたれており、

バッキリ折ってしまった・・・ので、シーバスロッドで最も柔らかい竿を新調。

3.5グラムのジグヘッドやスプーンに対応できそうなヤツで、つまりチヌ中心志向。

(チヌ用ロッドもあるにはあるが、短すぎるので選外だった)

ソフトルアーに柔らかい竿という、これまでにないタックルを持ったことで考えが柔軟に。

コダワリがなくなった・・・とも謂う。(笑)

 

と思っていたのだが、例のオニヒラアジがイノーにも入るので、ラパラで狙えないかと用意。

不良在庫応用グセが出たのである。

テストしようにも、皆目ヒラアジがいないので、困った。

そこへ、良形チヌが足元に寄ってきたから、チョイ投げして横を通すと・・・リアクションバイト!

必ずしもソフトルアーでないと・・・ということもない。 でも、二度とラパラで釣れる気がしない。(笑)

肝心のイノーのヒラアジは、浜と違って食ってこない。 アレコレ試したルアーを全て見切られた。

仕舞いには、ルアーが接近する前に遠ざかっていたから、PEラインがガイドにこすれる、

ゥイイ ゥイイ という音が糸電話の要領で水中に伝わり、それを察知していたのかもしれない。

 

オニヒラアジとチヌとどっちが美味いかというと・・・焼くならオニヒラアジ、刺身ならチヌ。

同じ寸法ならチヌの方がマシかな。 料理のバリエーションは、やはり白身に軍配だ。

 

オニヒラアジとの出逢いが増えたことによって、生態もわかってきた。

砂地の浅瀬に好んで回遊するのが、オニヒラアジだ。 なので体高も低い。

今ではメッキでも、オニヒラアジと、他のヒラアジを見間違えることはない。

メッキの大半を占めるのではないか?と思われるほど、釣り動画のメッキはオニヒラが多い。

 

東海岸が凪いだら、すかさず浜へ赴く習慣になった。

凪の浜、尾を水面から出し、逆立ちしてソフトルアーに食らいつく・・・

どこかドンクサイ、観たこともない魚が掛かった。

地味で特徴はないが、50センチ弱、1.8キロあった。 毒魚は記憶しているから、これは安全。

持ち帰って調べると、ウチナーグチでガクガク。 確かにグーグー鳴いていた。

ホシミゾイサキは、たまに群れで漁港などにも入ってくる。 けれども、さほど釣れないらしい。

浜は、海釣りの愉しみ・・・何が掛かるかわからん・・・のを手軽に味わえるのも魅力。

 

浜の外道は当然、ゴミでも食らう系人食い鮫イタチザメが筆頭だが、ボーンフィッシュも厄介。

引かれると、その方向へ泳ぎながら、弱らないまま浜に揚がってしまうから、暴れて大変だ。

しかも、死んだ直後からモーレツに足が速く、すぐ調理しないと食べられないというか、

刃物で切るまえに、身が崩れてしまう。

ゲームフィッシュとして有名だが、フライ専用で、リールの仕掛けでは全く面白くない。

ついついロングキャストしたくなるものの、あくまでも、沖に投げてはイケナイのである。

 

気候変化のためか、風向きと波が変わって浜が浅くなり、チャンスは満潮前後だけになった。

ツバメコノシロは、それなりに釣り方がわかってきたので釣果もあり、最大で51センチ、1.3キロ。

稀に、エラ洗いすることがある。

 

意外にも美味かった。

脂の乗りは秋深くなってからだが、旨味は抜群で、臭みも全くないというか、海藻のよう。

刺身を食べても、生臭さ自体が薄すぎて、やや味気ないほどだ。 寿司には好いかもしれない。

汁に至っては、ほとんど魚の風味がしない。 モズク風味のような不思議な出汁になる。

にしろ、今のところ島で最も美味い中型魚である。

 

漁港に多いオキフエダイは、味は抜群だが、大きくても20センチ前後の幼魚しかいないから、

ターゲットにできる大きさではない。 親はもちろん、オキにいるのだ。

 

妙な実験をしてしまうから、せっかくのチャンスを無駄にしていることも否めない。

ブラーをスプーン代わりにして、コバンアジを掛けてみたり。(笑)

釣れたルアーを使わなかったり、別の色を試したり、不良在庫を用いてみたり・・・

真面目に釣らないところが、私の弱点だ。

 

浜はタイミングが難しいから、宮仕えしていては無理かもしれない。

無論、週末釣り師にも困難なポイントだろう。

 

タイミングが合えば・・・狙っていなくても、自動的にサイズアップする。(笑)

現在の記録は、昨夏のオニヒラアジ、4.4キロである。

磯の様なダイナミックな釣りではないが、長いやりとりもスリルがあって愉しい。

赤っぽい濁りの出る砂浜では、絶版カラーのグラスミノーLが効く。

あと2本だけになってしまった。

 

今年の記録は先月のヒラアジで、まだ4キロである。

なかなか素直に、ツバメコノシロは釣れてくれないのであった。

ただ、おそらく国内でツバメコノシロを狙っているのは、私くらいなものだろう。

同時に、オニヒラアジを外道扱いしているのも、私くらいだろう。(笑)

ちなみに、グラスミノーのカラーは現行の濃い緑とラメのもの。

 

リールは20年前のモデル、バイオマスター4000XTをベアリング交換して絶好調である。

ギヤのすき間を、100円の赤い下敷きでスペーサーをこさえて調整したところ、

ステラ並みの滑らかさなってしまったから、ギヤが割れるまで続投しかない運命だ。(笑)

 

そうこうしているうちに、もう8年半近く過ぎてしまったし、ちょこっとしか釣れていない。

大物釣りも、そろそろ懐かしくなってきたので、準備はしてあるが・・・サメが気にかかる。

伊仙町では、サメ退治に補助金が交付されているのだ。

さりとて、もう道具が旧くて、そろそろゴムとかイカレてきているし、限界かもしれない。

 

楽して、美味くて中型の魚を釣る・・・できれば地元で・・・という願いは強い。

それにやっぱり、磯が好い。

さらに、誰もやらない方法で釣りたい・・・偏屈釣果は、これからも窮まり続けるだろう。

趣味なのだから、効率を探求する必要もないし。

 

秘かに狙ってる磯がある。

わが家から走行距離で3キロくらいのところにあり、平土野(へとの)の外れにある。

見ての通り、磯から30メートルほどで深くなっている。

最悪、南大東用に組んだ、ケプラー繊維の長いリーダーをドロップオフに接触させて止める、

あの釣法を使うことになるかもしれないが、狙いはまずヨコシマサワラである。

来そうなのはバラクーダだが・・・

磯への降り道がよくわからないのと、引き潮でないとヨタ波に流される地形だから、

炎天下の集中力を欠く偵察では、ケガをするのが関の山だ。

 

どうやって、磯を釣り場に変えるか・・・も愉しみののひとつとなりそうだ。