リールを握る手に力を

 

竿尻を作ってしばらくしたら

延々と河口でウェーディングしているとき

妙に手首へ無理が掛かる事に気付く。

どうも親指が無理に竿をつかもうとするけれど

掛かりがないから異常に疲れてしまうようだった。

 

当時、カーボンテクノロジーの円熟期と

バブルの全盛期を迎え

細すぎる磯竿に高価な一体成型のグリップが

リールシートにつき始めた。

 

これにインスパイアされて作り始めたのが

このグリップ達。

(真似して作ったと言わずにインスパイアってのがいいでしょ)

スクリューのところに人工の籐が巻いてあるのは

真冬の朝の寒さで金属がコタエルから........

まだあまり作ってないから

制作行程は変わってない。


●まずはスケッチ●

スケッチはもう残ってないので残念でした

あしからず。


●木を選ぶ●

最初はその辺のヒノキ材か何かで作った気がする。

今でもヒノキを使うだろうけど

桂や朴の木も悪くない。


●けがく●

立体的なのでまずは上面をけがいておき

糸鋸などで切ってから

今度は側面もけがくと作り良いけれど

結局局面は作っていくうちに手と目で決めていくしか

予測がつかないもの。


●切り、削る●

外形を鋸でひき、その後は良く切れるナイフで削ぐ。

この時、木目に逆らわないように曲面を

構成しつつすすめる。

ドレッサーやサンドペーパーでは

窪んだ面やある程度シャープなエッジは

上手くいかないから刃物が適しているみたい。

竿に乗せながら、また時には両面で仮どめして

握りやすさや形を確認したり、

また肝心なのは竿に合った局面を作る事で

これは丹念に勘を頼りに合わせるしかない。

直刀である小刀やきりだしはこの局面構成には限界があり

ぼくはそれでナイフを使った。


●サンドペーパーをかける●

刃物での作業が終わったらサンディング。

ご存知とは思うけど、サンディングした後で

刃物を使うと刃物が途端に切れなくなるので要注意。

砂が木目に潜んでいるのである。

400番くらいまでで十分仕上がり

あとはコーティングにまかせることに。


●目止めと竿とのコンタクトが肝心●

とりあえず何度かコートして竿とのコンタクトをとる。

これはどんなにきれいに削っても竿との隙間が出来てしまう。

コートをはがしても良いから

グリップの竿と接する面をサンディングして

荒らしておく。

竿側にはマスキングテープなどを平らに張り

なるべく重ならないように貼ると

仕上がりがぴったりする。

というのも、これを型として

サンディングしたグリップにエポキシを伸ばして

ここに貼りつけてしまうのだ。

そうして慎重にはがしとって

更に慎重にはみ出した不要なエポキシを削り一息つく。


●コーティングと塗装●

問題はせっかくのエポキシで型を取った面に

セルロースのコーティングを乗せない事であり

ここはしっかりとマスキングして

外形に合わせてカットしておく。

文章からでは分かりにくいが

コンタクトする部分だけにマスキングテープを残す

コツのいる作業である。

そうして容赦なくコーティングするが

意外にコートが難しい。

コーティングは何らかの引っかけがないと

どぶ漬けきないではないかと気付くだろう。

これまた先程マスキングしたところに

割り箸などを両面テープでしっかり固定して

この箸を持って漬けると楽。

頃合いをみて好みの色を塗るけれど

この時はルアーと同じで

セルロースを混ぜて塗らないと流れてしまう。

セルロースってのは溶解力が強いから。


●いよいよ竿に付ける●

マスキングの縁をカッターで切り込みを入れ

少しづつ無理しないではがしていき

後はカッターとサンドペーパーで仕上げて

密着できるようにする。

竿に付けるには市販されている両面でも

強力なものを使用する。

ただし、カーペットなどに使う厚手のものは

使わず、0.16ミリ程度のものがベスト。

先のマスキングして型どりしたときのマスキングと

同じくらいの厚みがベストである。

案外ぐらつくけど

それほどの力が掛かるわけでもないし

時が経てば粘着力も増すから。


●使って確かめる●

せっかく作ってもフィーリングが悪かったら意味がない

次のためにも必ず得失をチェックすべし。

でも作り直すには気力が出ない、僕としては。


●NFT15フィート用●

二作目

竿にマッチングする塗装

滑らかな曲面を作るのに何度か削り直し

フォローが大変だった。


●チームダイワ14フィート用●

三作目

角度が変わると形の印象が変わるほど凝った形

二作目までとはスクリューが前後逆である。

ダイワのセンサーハンプシートの上に

更に重ねて使うのは抵抗があった。

でも使い勝手はとてもいい感じ。

この際細かい事は気にしない

相手は大波と共に生きるヒラスズキなのだから。


 

最近はごつい手袋をして

ヒラアジに釣戦するのに

この手のグリップがかえって邪魔なので

休止中

それよりファイトするときのグリップが

別の場所に必要になった。

それはまた別のところで......