何年ぶりかの和歌山への釣り旅行

直前までいろいろとあって忘れ物も続出の出立

またしても気が乗らないような

さえない気分でのお出かけとなった。

 

とは言うものの、久しぶりの青空に

9月をすっぽりと仕事でパスしたような生活で

秋が来ているとは実感してなかった。

 

時おりしも東名集中工事

珍しく高速道路で余裕の風景観察ができ

真昼からずいぶん傾いたイメージの太陽と木漏れ日

ゆれるたくさんのススキをとおってくる風

10月はとっくに夏から秋へと衣更えした季節だと

ここへきてはじめて気がついたのは

釣りに出かけていなかったせいでもあった。

日差しも柔らかく、風は乾いて少しだけつめたい。

 

そういえばしばらく朝夕の時間を見ていなく

夜明けも夕暮れも頃合いを見失っていて

その上潮見表すら忘れてきた。

 

とりあえず、のんびりと行ってから

どうするか考えることにした。

 

忘れ物は多かったけれど

温泉につかるための専用のタオルなどの入った

「わくわく温泉セット」

はシッカリと携えている、安心だ。

 

天気も良し、体調も良し、気分も良し

風景もよろし

とりあえず渋滞さえなければ言うことなしなのだ。

 

「っそれにしても、こんどるなー」

独り言を言い始めるころ

日は西に傾いて、この先何時間もあるので

やっぱり実家に待避することに。

忘れた道具も少し途中の釣具店で買い足して

また道具が増えちまった.........。

 

何を忘れたかと言えば

最前線でもっとも重要な装備

「ライフジャケット類一式」である。

一式とは

ラジオペンチ、ハサミ、ストリンガー

ウェス、出刃包丁、8号ハリス、予備のより戻し

などがもはや入れてあったのだ。

忙しいとはいえ、ここまで完璧に準備していたのは

実に長男らしい措置であるけれど

おおよそそれを忘れたら代わりのないものが多い。

 

その昔、高知は四万十川へ遠征したときに

同じ黒いごみ袋に入ったのを取り違え

ウェーダーが毛布にすり替わっていた時の

衝撃以来である。

 

あの時は現地直前の宇和島で気づき

愕然としたものであった。

 

まあ、遠征してロクに釣れたことはない、

今回もそうだろうと開き直ってみることにした。

 

さて

和歌山への道中はもちろん三重県側からのアプローチ。

このところ大きくて立派な道の駅がそこここに出来て

ずいぶんと便利になったものだ。

おトイレポイントをチェックする必要もなくなった。

和歌山に多いオークワというスーパーと

ハズレも多いが農協のAcoopもおトイレとしては使える。

パチンコはやらないのでどうも入ることが出来ず

おトイレとしては、なじめないのであった。

 

かわやの話は置いといて

お気に入りの道の駅がある。

ウミガメがいる道の駅だ。

この前に寄ったときはウミガメのいるプールに

それは大きなチヌとグレが同居させられていて

そっちがすごかった。

今回はボラさんしかいないけれど

10頭近いウミガメを飼育して無料で見せているのは

まことにもって大した物。

プールとは別に水槽もあって

シマイサキやらコガメやら

このセイゴやらを養っていて

左側のセイゴは

あれこれ試したけど

どう頑張っても、こちら正面しか向かない

非常に好奇心旺盛なセイゴである。

 

ウミガメの巨大なハリボテもあって

ウミガメマイタウンという訳の分からない

キャッチフレーズだけのことは十分にあるのである。

遊具に至るまで念入りに

出口も念入りに。

 

熊野には七里御浜という広大な浜があって

ここは釣り人もまばらであり

駐車スペースもそこそこあって

実にゆったりとしているけれど

お魚もまばらな様で

インターライン投げ竿を使うおじさんは

ついぞお弁当中には何も上げなかった。

まあ、のんびりを補給するには

最高のポイントであることは確かだ。

 

いよいよ和歌山へ入るとき

熊野川を渡る

別名を新宮川とも言うがどっちがどっちやら。

そんなことよりもこの河口に陣取った

左の煙突、紀州製紙が一番の問題である。

ちょっとニンニクに似た臭気は

以前台風をやり過ごすために3日も耐えたことがあった。

以来もうやることはない。

釣れるには釣れるらしいのだが

景色も気分もよろしくない、今となっては

竿を出す気など全然なくて通過。

ちょっと上流でやると良さそうではある。

新宮から勝浦は目と鼻の先

いつものバッチげな、いかにも漁師の風呂らしい

勝浦温泉は「はまゆ」へ行ってびっくり!

都会でもつぶれる風呂屋は多いのに

改装しているし、

料金は290円とやっぱり和歌山の公衆浴場相場を

シッカリ堅持している

勝浦温泉は健在だ。

勝浦から鯨の町「太地(たいじ)」をぬけ

また勝浦に再突入して

さらに古座川を渡って串本に入る。

 

ここで異様な景色が広がった。

串本大島に橋が架かろうとしているのだ。

物々しい景色に驚いているとそれだけではない。

もうしっかりとそれを当て込んで

Acoop串本店がオープンしていた。

それほど串本大島って

大きな人口を抱えているのだろうか......。

 

とりあえず

目的の本州最南端の岩場クレ崎へ。

やはり人がひしめいていて

関西でも陸から行ける

黒潮本流の恵み多き貴重なポイントなので

 常連も多い

ここに来なければ釣れないというのが

上手いのかどうか?

それはおいといて常連さんは

皆仲良しらしい。

パンチパーマの厚き友情の世界で

サラリーマンには近寄りがたい姿にも見える。

 

実際そこを占める人たちのほとんどが顔見知りらしい。

 

長年夢見たポイントが

案の定この姿で後悔もヒトシオ。

南大東を目指していて正解であった気がする。

 

普段仕事では過酷な競争を演じざるを得ない

サラリーマン

そのストレスを力に換え

釣りに行くのだけれど、ぼくの場合。

釣場に行ってまで人がひしめく姿は

こっけい以外の何者にも見えない。

 

こんな釣りを求めてやってきたわけではないのであった。

 

多分、月曜日になれば大丈夫だろうと思い

最後の朝は早起きしてやはりクレ崎へ。

今度はパンチパーマは居ないけれど

地元のルアーマンがひしめいていて

これまたみんな同じ釣り方で

同じように釣れていない姿に

どん底まで落ち込んだ気分になってしまった。

 

前の晩、せっかくのヒラスズキもお目見えする

古座川に竿を出したけれど

ボラ大集団に襲われ

当たりかスレか良く分からない

手応えに翻弄されて2時間をすごした後だけに

シケかけた海を見つめてしばし呆然となった。

ああ、もはや和歌山は

目指すフィールドではないのだろうか?

確かに、ヒラスズキ以外ではあまり恩恵のない

お土地柄であるということが

今回少し確認できた。

 

そう

和歌山にはカンパチが少なく

似たような地の利でも

シマアジなどは全然居ないのである。

 

伊豆諸島の魅力をここに来てはじめて噛み締めた訳で

やはり憧れだけでは釣れないと実感。

 

これまでの伊豆大島では

まずカンパチに見放されることは少ない。

これが何を意味するかというと

カンパチは好奇心が強く

明るいさなかでも関係なくルアーを食う。

 

これに比べヒラマサやブリのたぐいは

明るいうちは余程の水深がないと食いにくい。

 

いつの間にか釣りの話に突入して

またしてもコダワッテしまっているなぁ。

 

まあとにかく伊豆大島のほうが近くて

静かに釣りやすいことが

ハッキリと解釈されたのだ。

 

ただ、このような書き方をすると

串本ファンや和歌山ファンに誤解されるので

もうしばらく書き加えると

和歌山は多彩な地形で、目的の釣りが出来なくても

すぐそばで別の釣りが楽しめるのである。

 

豊かな川、浜、磯、黒潮本流から内湾、

アユ釣り、アマゴ釣り、サツキマス釣りなど

四季を通して多彩な釣りをただ一つの県で楽しめる。

 

もちろん日本記録の出た

フロリダバスの巣くうダムもある。

あれ?あれは三重県だったかな?

 

とにかく深い山を背後に

黒潮を目指して流れる川が

おおよそ全てのフィールドを形成しているのだ。

 

その川たちは日本最多雨地

大台ケ原付近を水源に持つ。

 

これが和歌山県以上の何でもありの釣りフィールドは

多分日本中どこにもないと思う由縁である。

 

もちろん絶対釣れない魚種はあるけれど

サケとか、大きなヒラアジとかイトウとか......。

 

でも、今のぼくには魅力が今一つ。

それはなぜか?

現地といわず、帰りの車の中といわず

最近の気の向かない釣行の謎や

現地に行っても竿も出さない

妙な余裕は何なんだ?

 

自分の心持ちながら非常に悩んでいるのである。

 

人生に疲れ果てたの?これって?

 

何かに付けて考え込む悪い癖かもしれない

でも

もう釣りの目的は無くなったのか?

見失ったのか?

 

なしてこんなに悩むのか?こげんことで。

 

おおかたの釣りを通じて発見できる自分が

発見尽された感があるのは事実。

  

したがって、釣りに没頭しきらず

とっとと温泉へと向かう。

 

先に紹介した勝浦温泉は

串本の釣りのときは大体利用する。

おおむね30キロはあろうかという距離を

ただ

風呂に入りに行くのが普通と思っている。

 

温泉に入るといや銭湯に行くとそうなのだが

つい柔軟運動を広い湯船でやってしまう

大股開いて。

 

それを見ていたルンペン風の

怪しい髭面のおじさんが

勝浦のホテルの船便は最終何時です?

とたずねてきた。

 

くつろぎを超えた生活感の様なものを

ぼくの銭湯モードに感じたらしい。

地元の人にでも見えたのだろうか?

 

話が見えにくいかもしれないので解説すると

勝浦には船で渡らないと行けない立派なホテルがあって

そこをどういうわけか抜け出してやってきた

おじさんなのであって

怪しさと風体に応じた銭湯に入りたかったのかどうか。

 

大体からして

今一つ納得の行かない

嬉しくない事態であるけれど

ある一線を超えると

長男であるぼくとて自由になる。

 

たとえばトイレ

お食事中はこれ以上読まれないように。

 

トイレに行ったらば

小用、大用を問わず「へ」は一気に出しきる。

時には腹の奥にある気配を感じると

ひねり出すように出す事すらあるが

これは今一つ爽やかさに欠け

ちょっとしめっぽい感じのサウンドである。

 

サウンドは別として

トイレでは大々的に人のいるいないに関わらず

力いっぱい排気も行う、これが大切。

 

自己紹介のコーナーでも述べたように

会社でも鼻をほじる

ただし、ちりしは使うよ。

(ちりし?ティッシュだろ?ということはこの際問題外)

 

こういった現象は多分他にもあるだろうけれど

今はこれくらいしか思い付かない。

 

怪しい髭面のおじさんと言う点では

同点決勝といったところかもしれない。

  

怪しいほどに味のある男でもあるのは

言うまでもない。

いや、これはぼくのことではないよ、別に。

 

その次の日は

白浜温泉

この時は枯木灘の方面へ

大好きな日置川町で朝を迎えたかったからだ。

(紀伊半島の東側を熊野灘、西側を枯木灘という、知ってるよね)

思い出深いヒラスズキの浜である。

 

水温が高い今はまだシーズンでもなく

すぐ近くの志原や村島磯は

連休なので人も多いことが分かっていたから

竿は出さずに

秋の気配濃厚な日置川の河原で

道具のお手入れがしたかったのだ。

なんだカンダ言っても

ちょっぴり竿は出していたのだった。

 

川をのぼって行く途中で

桜の花が咲いていた。

いいなー日置川町は秋でも桜が咲いて......

 

朝もやの残る山の向こうから朝日が射して

キラキラと水面を輝かせる

ずいぶん昔にどこかで見たような風景。

その河原へ草履でわざと水の中へ入り

バケツで水を汲むと

一機に川と親睦した気分になれるのである。

単純なもんだ。

 

ただ爽やかな風と光と水を感じながら

お手入れをする。

これが私腹、いや至福の時間であった。

本来海が好きなんだけど

朝の山を背景に流れる日置川は

何者にも代え難いのだ。

このためだけに

いつもの日置川町役場の裏手の駐車場で

夜を明かせるわけで

およそほかの人には理解できない事象であろう。

 

それがぼくなのである。

 

その前に白浜温泉なわけで、前振りが長すぎて

そのまま次の内容を全部いっちまった。

 

日置川町の奥には

エビネ温泉という一風変った

以前は400円もする沸かした温泉があった。

 

朝、沸いたら入れる時間で

およそ8時ごろからだった気がする。

 

何が変ってるって

その泉質。

シャンプー使おうが石鹸で洗おうが

そのお湯はヌルヌルで

何が何だか分からないのだ。

 

これに入って爽やかかというと

全然そんな感じでもない。

見た目は透明だ。

かてて加えて湯船がグラスファイバーと

趣も十分......。

その丸みとヌルヌル感が一体となって

湯船に浸かった感じがまたたまらなくエビネである。

  

でも人気は上々で朝から駐車場は満杯。

ただし、10台停まれたかどうか。

 

このエビネ感を味わうために

通う人もいるとかいないとか。

 

ぼくは通わなかったけどね。

で、ようやく白浜温泉。

でもまだあって

途中にはもう一つ椿温泉というのもある。

ここも冷泉で、汲んで帰れる施設も国道沿いにあるのだ。

 

椿温泉は知る限り内湯中心。

集落も小さくて漁業も盛んとはいえないから

どうも漁師町特有の風呂屋が成り立たないようだ。

 

まだある

目指す白浜温泉のなかでも

一番目立つ海側の一軒家的温泉がある。

路駐もはなはだしいご利用客たちが集うこの温泉は

まともな駐車場は5、6台しかなく

しかも白浜温泉の中心地にある外湯で公衆浴場。

 

だから駐車できないことが多くて

今回も仮眠まで出来る

健康センター的なクワハウス白浜を

利用しようかと思ったが

1800円の料金がこの期におよんで気になり

とりあえず白浜の半島をもう一周してしまったら

駐車場が空いてしまった。

 

やっぱり温泉は公衆浴場に限る。

 

ここも爽やかさにおいては

湯は全然問題なし

ただし、石鹸の利用に課題が残る。

 

塩分のある温泉なのだ。

 

お分かりの向きはあろうけれど

塩分は石鹸の泡を立たせないのだ!

 

泡立たせようと思うと

湯を使わないで水をかぶるしかない!

 

湯と水のブレンド量を加減しても

やっぱり泡立たない。

それどころか、一度湯をかぶると

その塩分が体に残り

ちょっと水をかけたくらいでは

泡立たない強力さである。

 

まった又

一頁が長くなってきた!

 

でもまだまだ。

 

とりあえず石鹸をなすりつけて

美しく洗い上げたのだと自分に言い聞かせることが肝心。

 

そのあとは

湯船に入ってしまえばこっちのもの

もはやそんな些細なことは問題ではなく

楽しい心地よい天国極楽気分の

温泉ライフが満喫できる。

 

ひょっとすると

この葛藤があるからこそ

極楽度が増すというものだろうか?

ちょっと自虐的すぎる向きでもある。

 

ここに入っているとき

二つの湯船の一つがぬる目であり

それに気付いたハゲオヤジが

「こりゃぬるすぎるよなタイショー!

やっぱし男は熱い湯に入らななぁ」

などと言い出した。

 

どこか寒いお土地の漁師町で男湯、女湯は

温度が全然違って

男湯は熱いというのを聞いた事があるが

なして風呂に入るのに片意地張らにゃならんのか

よう判らんっちゃねー状態。

 

個人的には気分によって入り分ける訳で

はぁそないなことゆわんで

ぬるい湯もええ気持ちわい的至福の時間。

要はこのハゲオヤジはワガママカッコ付け男であり

お風呂でカッコつけなきゃ他でカッコつかないぞ男

でもある様に見えるわけで、

男たるモノ

こだわるときはここ一番と言う時にせねば!

思わせる

銭湯モードとしては

実りある事態と考察だった。

 

ハゲオヤジと言う点では

あれほどではなく、まだまだリードしているが

変にこだわらんようにせにゃと

反省至極である。

 

熱い湯ぬるい湯

両方入って極楽気分と価値ある考察を得て

心身ともにリフレッシュし

満足のいく温泉ライフである。

 

最後は

偶然見つけたサンゴ湯。

潮の岬で出遭った松坂のアングラーが

ふと語った名前だが

詳しく聞かなかったわけで

ちょっと休むのに公園へと思ったときに

サン・ナンタンランド(運動公園)へ

行く途中に発見して入れた、串本の温泉である。

運動公園とは公園とは名ばかりで

陸上競技場やサッカー場の集合体で

ゆったりとくつろぐ空間ではなかったが

サンゴ湯発見により一気に価値ある訪問となった。

位置的には右に見えるオークワ串本店の裏辺り

ちょっと勝浦よりの新しい踏み切りを越えて

山へと上がっていく途中にある。

正面は串本大島への橋。

 

これだけ詳しく言っても

判る人は極々少数だとは思うけど。

 

残念ながらお写真はこれまた撮ってない。

 

閉店?まぎわに滑り込んだのと

後は気持ちよさに忘れちまったので

撮りそこなったわけ。

 

尚、串本と日置川町の間にある

風変わりな地名と共にある

道の駅

周参見のイノブータンランド

(イノブーンランドというのも語呂的に悪くない名だ)

ここはできあがる直前に訪れた事が有って

この意味不明な塔の壁画が描かれているところだった。

どんなことになるのかと思ったけど

コリにコッた意味不明土産店的に仕上がったのである。

ここはウミガメの道の駅から察するに

イノブタマイタウンなのだろう

きっと。

イノブタが住む愛すべき町なのだと思うことに。

温泉とは別にこうした道の駅も

捨て難い旅でもあった。

こうして三泊で温泉三軒を制覇し

日置川での感無量のお手入れもできて

そのうえ大好きな

星空ベッド状態の車中泊も

虫の声付き月明かり付き波の音付きで味わって

かなり心の栄養を補給できた旅であった。

 

だめでしょうか?

釣り人がこんなことでは。

アクセクしない、だらぁぁぁぁっとした旅、

長男の休日

独身の過ごし方

けぇっこう気持ち良いですけどねぇ。

 

次はどんな旅になるやら


ではまた。