島の心意気と味に酔う最終日


明くる朝から昼までは暇である

石垣のタクシー代を節約しようということで

一緒の便で石垣へ帰るカシオ男と約束をし、自由行動だ。

ゆっくりと集落を歩いてまわり

観光ガイドのお店を探したりして過ごした。

ただ、肝心の島で唯一のお土産屋は見つけられず

バイクで迷ったときに見かけだだけに惜しい。

(新しくてお洒落なお食事処パナヌファ)

(舗装はなくてもマンホールだってある)

しかし遊んでいる地元のオコチャマたちにからかわれるので

これ以上は探索は続行が難しく

断念せざるを得なかった。

(島にはまだチャンと井戸が水をたたえている)

 

それでも暇なので大阪の釣りの弟子などに電話していると

若旦那がやってきてビンを渡してくれる。

見ると「泡波」!!!

幻の泡盛、島酒、780円がいただけたのである。

聞くところによると石垣でも4000円するそうで

値段ではなく、

タダの客に泡波を持たせてくれた若旦那の心意気に

はっとさせられた嬉しい出来事。

旅はいい、こういう人の温かさっていうか

粋っていうかこういうのが旅の良さだと僕は感じる。

 

帰る船は実のところ決めていなくて

安栄か波照間海運かと迷っていたが

帰りは安栄号を楽しむことにした。

カシオ男はニューはてるまなので

10分遅れで出港だ。

島への便が二本づつほぼ同じ時刻にあるのは

どう見ても不自然であるけれど

事実は受け入れるしかない。

 

で、切符売場はというと8000万円を投じた待ち合いの中ではなく

実はランクルで若旦那が売っている。

東南アジア的な怪しげな売り方であるが

そのランクル売り場でお金を払うと

すぐ船のところに座っているニーチャンに渡すのも怪しい。

とても日本的ではない旅情あふれたシーンだ。

 

で、トイレにいこうと船を下りようとすると

トイレなら船にあると教えてくれ

いってみるとかなり狭いトイレだ。

狭くても機能は一人前なので、立派に用を足して

いざ水を流そうと壁のボタンを押したところ

わわわわああああん」

侵入者発見というか敵襲というか第一種戦闘配備というか

スンゴイ警報が鳴り響いた!

なんだ、何が起こったんだ!俺はただ、水を流したかっただけなんだぁぁぁぁ

問いう心の叫びと共に音響は静まっていき

 

そして

 

ジュワァーと水が流れた。

ボタンはやっぱり水洗ボタンであった

このおトイレは水を流す事が非常な事であるようである。

そういう事はあらかじめ書いといてほしい

こんなことならやっぱり待ち合いのおトイレが良かったと

スッキリしたはずなのに航海前に後悔してしまったものだ。

 

走り出した船は外洋に出ると15分ほどはジェットコースターで

みな必死に耐えているが、集落探索のときに会った自転車の女の子は

なぜか口元に笑みを浮かべていた。

しかし、僕も実は楽しさのアマリ笑みを浮かべていた......。

 

ニューはてるまは船底がフラットらしく、ジャンプ後の衝撃はすごかったが

こちらの安栄号は衝撃がそれほどでなく、V型艇なので波きり性能が高い模様。

したがって、ちょっと寂しい衝撃である。

(あちこち傷だらけの快速艇、安栄号)

さて、石垣島は離島桟橋でカシオ男と待ち合わせ

昼食を求めてさまよう。

折角だからやっぱりソバだろうと、ついB級グルメに付き合ってしまう事に。

ソーキソバが大好きな僕としては、たとえ札がひっくり返っていても

オネーさんに確認すると、なんと一人前ならOKという幸運!

したがって、カシオは八重山ソバどまりにせざるをえないのだが

この際長男の頭からは遠慮などということは全く消え、食欲優先モードになっている。

 

八重山ソバが先にやってきて

流石は日本の営業のカシオ男、食うのは速い。

 

ようやくやって来たソーキソバは凄かった。

出汁ガラとは言い難いほど立派且つ立派な豚バラさんがドドーんと

面の上に横たわっている。

肉を食べるだけでも大変で、星空荘の八重山ソバからようやく開放され

本来の沖縄ソバの美味さを回復したのである。

 

ただ、

勘定が心配で、カシオ男が笑いながら「2500円くらい取られたりして......」

なんていうけど、洒落になってない気がする。

 

実際には850円とすこぶる良心価格で

毎日食べに来てもよろしい気分である。

 

ちなみに八重山ソバは650円だったから

具の違いが200円の開きだったわけだけれど

2500円と言わしめるほど確かな手応えのある逸品に満足いく昼食だ。

 

長いこと舌鼓をうっていたので、早めの便で帰るカシオ男は時間がない。

慌ててタクシーを拾って、時間がないことを素直に伝えて

すっ飛ばしてもらう。

確かにすっ飛ばしてくれて、すんなり空港に着いて

カシオ男と急いで別れることになったが

そのあと戻ってきてディレーでラッキーだったという。

 

お互いゆっくりとお土産を買込んで別れる。

どうせ二度と一生会えそうにはないけれど

「じゃまた、どこかまた海辺の町で」

と。

 

飛行機までは一時間以上あって

ゆっくりとアタリを眺めるていると

いろんな出来事が浮かんできては思い出に変っていく。

怪しい行動も、悔しい出来事も、いい加減な人たちも

全部旅の思い出の中に織り込まれていっている。

 

旅の終わりの現象。

 

さて、この泡波はライフジャケットの中に入れて

割れないようにするか、それとも、お土産の手さげに入れて

大事に機内持ち込みにしようかなどと

本来の長男モードへ切り替わりつつあった。

 

幸い飛行機は定刻に飛び立ち、夕焼けを背にしたり

翼に月光を受けたりしながら快適に羽田へ

僕はといえば

せっかくコダわって予約したのだからと窓際席の醍醐味を確かめつつ

いつしか心地よい眠気に誘われていった。


 

今回も長々と完読ありがとうございました。

もっと短くまとめようと思ったのですが無理でした。

それでは、また。