遥か昔から隔絶された島には驚きがイッパイ...
(後編/中自然編)
洞窟を目指してやってきたM氏
いつぞや、モズだけを追ってきた男、T博士
毎年家族やら従業員仲間?を連れてやってくる
名古屋のダガネダイバーズ達(仮称)。
この島には他の島にはないものがあるに違いない。
僕は釣り意外にはあまり深くは探求していないが
サラリーマンの常識程度には鳥も魚介類も昆虫類も記憶している。
釣り場は地元の人も足を運ばない磯もあれば
磯に降りる途中に通りすぎる森の中にもいろいろと生き物が満ちており
釣り師には天敵とも言える、海岸直下からいきなり50メートル以上の透明度を持つ
この上なく美しい海水をたたえる海など、ヒトツの事に熱中するにはもったいない
そんな環境があふれかえっている。
あふれかえっている以上、観察しないわけにはいかないのが
長男の役目でも義務でもあるのだ。
ただし、海の中は海流が速すぎるので、ダイバーでもエキスパートしか
潜水させてもらえないから、ここだけは僕も滅多に手が出せないのである。
話で聞くところによるとマンタもいればカンパチもいるし、イソマグロもいるとこのこと。
荒々しい地形なので、テーブルサンゴなんてのは居ないので
流れも速く、イキナリ水深も深くなるので、大型のお魚が目に付くらしい。
僕もコッソリと海に入ったときに目に付いたのは、大きめのお魚だった。
浅瀬のすぐ沖側にはオキザヨリの群れ、浅瀬には色鮮やかなベラ、ツノダシなど
いわゆる熱帯魚系、ごつごつとした色気の無い岩のように逞しい珊瑚の周りには
ハギ、ニザダイ系のお魚が多く、遥か沖にかすむモンガラカワハギの
群れを見たこともあった。
釣りをしているときは群れを見たのに、カスミアジは一匹づつで泳いでいた。
この島にはまだまだ見ていない、いや、見てもまた違う光景がアレコレあちこちと
四六時中展開しているから、それを探しに出かけるとキリがない。
でも少しでも見たい!そういう好奇心の塊のような人が通う島でもあるわけだ。
さて、そのほんの少しだけだけれどもご紹介させていただくことにしよう。
●ダイトウヒメハルゼミ
先々週来登場するS氏の弟子なのかどうか、O君も虫を捕獲し
島一番の自然研究化の西浜先生に献上するらしく
鳴声だけを耳にしていたので、そのセミの姿は一度見てみたいものだと思っていたところ
ふいにO君が持ってきてくれた。
(左♀、右♂)
ハルゼミ系らしく小柄で透明の羽根が美しいけれど、これといって特徴はわからず
いたって普通のツクツクボウシにヒグラシのカラーリングを足して二で割った感じ
というのが第一印象だ。
おそらく、昆虫マニアならたちまち違いが理解できるかもしれないが
そこまでは知識がないし、図鑑も持っていないので仕方ないのである。
鳴声もさして特徴的でなく、ただただ、ジーコージーコーと鳴くところも
伊勢の実家近くで鳴いていたハルゼミと変わらんという点で、
ちっとも珍しくないやつのような気がしていたのだが、
こうして初めてみた姿も、ちっとも新し味のない普通のセミである。
しかしながら、あのトゲトゲ植物の森にいるため
まさかこのセミの姿を見れるとは思ってもおらず
ヒトキワ感心して撮影におよんだ次第であった。
大東にはほかにも幻の小さなクワガタが居るらしく、近年、本島のマニアによる乱獲が
進んでいるらしいという噂を島のアチコチで耳にする事が多い。
●タカラガイ
僕の持っている小さな「海辺の生き物」という本には載っていないタカラガイで
深みの有る茶色にほのかな夜景のような班が怪しく美しい。
一見、コロンとその辺に寝てるのかと思いきや、滅茶苦茶強力に張り付いており
馬鹿ヂカラを出さないと水中からは取り出せない頑固者である。
散々見せていただいたら、ここぞと思うところに帰してやるのだが
どうも完全に窪んだところが安心できるらしく、それまで動かなかったくせに
モソモソと積極的に閉鎖的な空間を求めて歩き回るコダワリが
ここまで大きく成長させる生命力を支えているようだ。
(モソモソとウロウロ中)
●アメフラシ
これも前述の山渓フィールドブックスには出ておらず、名前は判然としないが
こちらがじっとしていると、潮溜りのアチコチでワラワラとカナリ激しく動き回るので
緑の体のわりに、それなりに不自然に目立ってしまう6センチくらいのアメフラシ。
(左が頭方面、目は角状)
通常、本土のアメフラシは20センチ以上の巨大さで、黒に近い体にゴマ粒風の
まだら模様が毒っぽくて新鮮な姿態なのだが、こちらのは小さくて
一見アオサ風なので、ササッと洗って酢醤油で食べれそうな感じが不思議。
この手の生き物には弱毒があるけれども、ドドンと腹いっぱい食べなければ
とりあえず実害は無いので、食べてみたいが、さほど美味しそうでもないし
ポン酢もないのでやめておくことにした。
ちなみに本土のものは、昭和天皇もきこしめしたというから、きっと大丈夫だ。
●ナマコ類
ナマコはどうも食用以外は図鑑に載せても見ようという人が少ないので
どうも僕の持っている書籍では調べがつかなかった。
調べはつこうとつくまいと、居るものは居るので、一応載せおくことにする。
じっとしているものかと思いきやモソモソと本気で活動中らしく
どうもバリバリと海草を食べまくっているようだ。
こちらも弱毒があるので、日本人以外はあまり食べない種族であり
珍味として食する中で育った僕でも、これを直接口にしたいとは
到底思えない存在であった。
暖かな太平洋沿岸のタイドプールには時に30センチを超えるナマコもおり
食べることこそ出来ないが見過ごすことのできない異形の存在だ。
●アサギマダラ
茶色の強いアゲハのようだが、白い部分はすりガラスのように半透明で
りんぷんが無い。足は、蝶には時折ある種だが、羽化して成虫になると
4本しかないのが軽やかである。
伊勢に住んでいたころも、時折見ていた南方の蝶だが、
大東ではモンシロチョウ並みにあたふたと飛んでいるから、
ありがた味は今ヒトツとも思えるが
この美しさには、どうにも都度立ち止まってしまうものだ。
羽化してからの経過時間によって、後ろの羽根が茶色から赤へ変わっていくようだ。
●アリグモ
小さくて撮影は出来なかったのだが、6ミリ程度のこちらのアリグモは
異常に蟻によく似ており、これだけそっくりに擬態するというからには、
よほど強力な蟻がいるのだろうか?(鳥も嫌がるほどの何かをもった蟻が...)
本土のものは黒いけれども頭がはっきりしない、というのもクモには胸と頭が
一体化した頭がついておりツーピース、蟻は胸と頭と腹があるのでスリーピース
それに、やや太めなのでチョット見れば分かるのだが、ここのは逸品!
本当にチョロロ、チョロッと歩き回るし、スマートで、一見スリーピースに見える。
ふるい落とそうとしたらビヨーンとぶら下がるので、そこでハジメテわかるわけ。
この視力1.5+(プラス)の究極的長男視力をあざむくとは、天晴れな擬態といえよう。
●トビ?
腹は白くなく、風きり羽根の根元が白いし鳴声がなかったので
トビとしか判断できない。いわゆる、全然めずらしからぬトンビだ。
本来は冬鳥として稀に沖縄方面に来るらしいが、ここ大東に初夏までいるというのは
カナリ不自然のように思える。
大東で大型の猛禽類はまず見られないので、貴重なはずだったが
ナンノ事は無い大ボケのトンビだというのは納得がいかない、
てゆーか納得したくない。
●その他の鳥類
ウグイス、シロハラクイナ、クロサギ、アマサギ、イソヒヨドリ、ホオアカ、モズ、
ヒヨドリ、スズメ、メジロ、キガシラセキレイなどがいて時折姿が見える。
バードウォッチャーは海岸に現れないので、
海岸付近に現れるウグイスやクロサギはどうも見ていないようである。
頭の黄色いシラサギ風のアマサギは亀池港に行く途中の
牧草地に多く、どうもニオイのする家畜好きなサギということだ。
大東のウグイスは独特で、小笠原のハシナガウグイスなど
ホーホケュと尻すぼみだが、ホーホケキィヨッと言う感じで粘っこい。
谷渡り(谷などないが)はケキィヨ!ケキィヨッ!ケキィヨぉっ!とかなりヒツコく
あまり近くでは歌ってほしくない気がする粘着性の歌声が魅力のウグイスである。
どうも「日本の野鳥」によるとリュウキュウウグイスというらしいが
まだ研究がすすんでおらず、亜種としての位置付けが定かではないらしい。
鳴声的には完全に違うが、鳥は地方性が強いものがおり
カナリアのように一年ごとに完全に鳴き方を忘れる種もあるので
どっこい早合点はできないところが奥深い魅力のヒトツだろう。
バードウォッチャーより朝夕の茂みを好む(茂みを抜けて釣り場へ行く)僕のほうが
たくさんの種を見られる可能性があるらしく、一般的な生活とは違うリズムで
活動するほうが、鳥たちとの遭遇を楽しめるというのは、分かっていても
やっぱり普通に生活してしまうのが人の常である。
例外として夕食後のひととき、宵の口に実のなる木にバッサバッサとやって来て
アチコチの木でギーギギっと騒がしく、向こうからやってくるダイトウオオコウモリは
大胆に強力な懐中電灯で探索するとよろしい。昼間はまず見つからない忍者だ。
(コウモリが居るという大東神社だが...)
滑走路脇の草地には大型の白っぽいアジサシ風の鳥が居るが未確認
ひょっとしたらシギ系かもしれない。
池なのにマングローブが生えている大池などにはカモやカイツブリがおり
ときおりクロツラヘラサギも現れるようだ。
●雨上がりには湿地が攻めてくる道路
これは別に生き物ではないが、雨上がりに海岸以外を走ったことがなくて
これまで気づかなかったのだが、原付では深刻な行く手を阻む現象である。
ちょうどビデオを撮っていたらミキサー車がやってきたので、その豊かな水量と
危険な水深をこの目で確認することが出来てラッキーだった。
「せんだつあらまほしきことなり」とは古今東西おっしゃる通りである。
もちろん、ここ一箇所ではないので、複雑な島の道は原付用迷路状態である。
●我が家のための電柱ですから...
大東に住んでいる人間の楽しい現象である。
自分の農地に家を建て、散漫に集合しないで作られている家屋が多いので
電信柱も半ば専用である。だから、その家の人が自由に使って良い...の図。
(左は自前、右は電柱)
さわやかな風を受けておおらかに泳ぐ、思ったより低価格めなコイノボリであるが
家との対比でも分かるが、そんなに小さなものではないのでアナドレない。
しかも、右の吹流しから電柱までは安全を見てかなり間隔がとられているのには
大胆な所業と、南国らしからぬ主人の不敵な心根が慮られるばかりである。
●デハビランドカナダ8ダッシュ100
これは完全に機械だが、この機体が相手にしているのは、大東の厳しい気象である。
手元に資料がないので詳しい性能は分からないが恐らく風速15メートル程度まで
飛行が可能であろう。
名前の通りカナダのビジネス機を中心にラインナップする飛行機メーカー製で
上昇力、巡航速度、安定性、短距離離着陸性能、共に日本の名機YS-11を上回り
いまや沖縄のローカル線を牛耳る琉球エアコミューターの主力となった。
しかし、今回のように、上空まで行って引き返したのには人間の弱点が起因しており
要は「滑走路が見えなかったから」降りられんかったわけであり
ちっとも悔しそうでも、申し訳なさそうでもない「200メートル上空から滑走路が
確認できませんでしたので、那覇空港へ引き返します」という、
たいそうアッサリとした機長のアナウンスによって、乗客全員の心は急降下か
ほとんど墜落したものだ。
僕などは、今夜の宿の心配といい、早々と無理してとった年休が
水泡に帰した事も加わって、ロックオン後に撃墜された気分であった。
有視界飛行、これは基本にして最大の問題でもあるわけだ。
厳しいなぁ南大東の自然って、風が無くても降りられないこともあるし
台風銀座でもあるし。
厳しい自然に、厚い人情とムキダシの好奇心
大東は普通の旅では行ってはならない。
相当の覚悟と、時間の余裕と、何物をも許す心がなければ、
せっかちな現代人にはとても二日とモタないため
島向きかどうか、人間を分ける島でもあるのだ。
機会があったら、ぜひとも挑戦し、玉砕してきてほしい、
これが自然、これが本当の離島、これが大東なのだから。
ちなみに飛行機代だけで、黄金週間の二週間前に予約しても
羽田から往復で98000円ちょっとかかってしまい
とってもゴージャスな旅でもあるので
その時点でご家族連れの皆さんは轟沈だろうか?